2020年もあと少し。皆さんはどんな1年を過ごされましたか?バタバタと忙しい師走ではありますが、新年を迎える前に足を止めて、歩んできた足跡を一度振り返ってみてはいかがでしょうか。
今回は、そんな1年の締め括りの季節にぜひ観ていただきたい映画『100日間のシンプルライフ』をご紹介します。スマホ依存とコンプレックスに苛まれる2人の男性がある日突然すべてのモノを手放し、究極のシンプルライフを送るうちに真の幸福に気づいていくストーリーです。映画の見所をご紹介しつつ、後半では実際にモノを手放し、どん底から這い上がったという経験をお持ちのミニマリストタケルさんにも、この映画の魅力とシンプルライフを送るメリットを教えていただきました!
デジタル社会に生きる現代人に贈る、シンプルライフ・エンターテインメント
フィンランドでムーブメントとなったドキュメンタリー映画『365日のシンプルライフ』をコメディタッチに脚色して生まれ変わった本作『100日間のシンプルライフ』。スマホにどっぷりと依存するプログラマーのパウルは、ネットショッピングで購入したモノたちに囲まれた日々を送ります。一方、幼い頃からの親友で共同経営者のトニーは、モノに依存するパウルを心配しつつも、外見を磨くことに余念がありません。そんな自身の満たされない部分を何かで必死に埋めようとする2人の男性が本作の登場人物です。
スマホ依存症のパウルとコンプレックスの塊のトニー。幼なじみでビジネスパートナーの2人は、アプリ開発事業も順調で多くのモノに囲まれる生活を送ります。そんなある日、大げんかした2人は酔った勢いで大金を賭けたある勝負をすることに。それは、所持品ゼロの状態から1日ひとつずつ必要なモノを取り戻し100日間生活するというもの。
■ルール
①持ちモノすべてを倉庫に預ける
②倉庫から1日ひとつだけモノを取り戻せる
③会社の食料は食べてOK
④買い物禁止
期間: 100日間
勝敗:ルールに従い、100日間成し遂げられた者が勝ち
罰ゲーム:アプリ売上のうち、自身の手取りの半分を従業員に配分
バトル初日、2人が極寒のベルリンの街を裸で駆け抜けるシーンには思わず笑みがこぼれます。パウル役に監督・脚本も手掛けたフロリアン・ダーヴィト・フィッツ、トニー役をマティアス・シュヴァイクホファーが出演。
インターネットの普及によってすぐに情報が手に入るようになり、好きなモノに囲まれ豊かな生活を送れるようになった現代。しかし、新型コロナウイルスの影響によって、自身の生活や人生を見つめ直した方も多いはずです。勝負をきっかけに「人生で大切なモノとは何か?」「本当のしあわせとは何か?」を考える、けっして他人事とは思えない切実な2人の姿が描かれています。
シンプルライフとは、主体的な時間を取り戻すこと
今回は、実際に所持品を見直したことで人生が変わったというミニマリストタケルさんに、映画の魅力とシンプルライフについてお話を伺いました!
ミニマリスト タケル
ミニマリスト・YouTuber。登録者7万人を超え、月間200万PVのYouTubeチャンネルを運営。SNSでミニマリズムの魅力を広める活動を行う。現在は、YouTube活動のみならず、全国各地のミニマリストを取材したり、ミニマリストオフ会を開催。2020年11月に2冊目の自著となる『月10万円で より豊かに暮らす ミニマリスト整理術』を上梓。
―本作は、所持品を手放すことで少しずつ人生が変わっていくストーリーですが、ミニマリストタケルさんもミニマリズムを知ったことで人生が大きく好転していったと伺いました。
ミニマリスト タケルさん(以下、敬称略):本当にそうですね。元々持っていた持病がストレスで悪化してしまって、当時同棲していた彼女と別れ、仕事も手放してしまった時期でした。人生の奮起をかけて本屋さんに行ったときにミニマリストの本に出合い、愚直に実践していったというのが始まりです。
―パウルとトニーのシンプルライフはとってもリアルに描かれていましたよね。きれいごとではないというか…。共感できるシーンはありましたか?
ミニマリスト タケル:それがめちゃくちゃあって(笑)。僕もすべての所持品を一度手放すという似たような企画をやったことがあるのですが、最初はすごく不便だなと感じました。ストレスも抱えるし、とにかく暇でどうしようもない。序盤のシーンは本当にリアルに描かれているなと感じましたね。
でも、パウルとトニーもそうであったように、暇だからこそ仕事に精を出せたり、ちょっとした人との会話が特別なものに感じたり…。外出をするためには服を着なくちゃいけないし、ご飯も食べなきゃ生きていけないし、そういう当たり前のしあわせを再認識させられる映画でした。
―モノを手放すのは、時間の使い方にも大きく影響を与えるんですね。
ミニマリスト タケル:それは間違いないですね。おそらく一般の方が想像するミニマリストは、とにかくモノを削ぎ落とす人みたいなイメージだと思うんですけど、それだけではないんです。たとえば、スマホとの向き合い方や時間の使い方、人間関係、お金、といまのミニマリズムは広義になっています。
僕の場合もスマホの使い方はすごく考えさせられて、いまでは全部の通知をオフに。通知は集中力を奪うし、受け身で情報をキャッチしてしまうのはできれば避けたいです。
―たしかに、友人からの連絡以外でもアプリからの通知が気になってしまって、そのままだらだらとスマホを見てしまうこともあります…。
ミニマリスト タケル:人って本当にだらだらスマホを見て過ごしがちだと思うんです。そうすると、受け身での行動が増えて、自分から主体的に時間を使えなくなってしまう。映画でも描かれているように、スマホって良くも悪くも中毒になるように作られているんです。だから、意識的にその時間を減らす必要がありますね。
スマホに触らなくなると、時間が余ってしょうがなくなりますよ。モノで時間を潰すことができなくなったとき、人間は何をするかというと、人生について考えたり、仕事について考えたり、内省するようになります。自分が本当にやりたいこととは何なのか、どんな生活を送りたいのか、これまで抱えていたストレスとは何なのか、あらゆることを削ぎ落とした先で大事なことが見えてくる。
―では、現時点で好きなことや、やりたいことが見えてない人は、モノを手放すことで変わってきたりするのでしょうか?
ミニマリスト タケル:そうですね。いまはむしろ能動的に考える時間をスマホや家に散らかるモノたちに奪われていると思ったほうがいいです。作られた中毒性を理解して、一度時間の使い方を見直してみると見えてくるものがあるのではないかと僕は思っています。
―ミニマリスト タケルさん、素敵なお話をありがとうございました!
2020年は新型コロナウイルスの影響で大きく生活様式が変わった年でもありました。新年を迎える前に、小さいけれど温かいしあわせに気づかせてくれる『100日間のシンプルライフ』を通じて、身の回りのモノや時間の使い方を見直してみてはいかがでしょうか?より充実した1年を過ごすヒントになること間違いなしです。
- ■映画情報
- 『100日間のシンプルライフ』
- 監督・脚本:フロリアン・ダーヴィト・フィッツ
- キャスト:フロリアン・ダーヴィト・フィッツ、マティアス・シュヴァイクホファー、ミリアム・シュタイン
- 配給:トランスフォーマー、フラッグ
- 提供:フラッグ
- 公式サイト:100simplelife.jp
- Twitter:@100_simplelife
- Instagram:@100_simplelife
- © 2018 Pantaleon Films GmbH / Erfttal Film & Fernsehproduktion GmbH & Co. KG
- / WS Filmproduktion / Warner Bros. Entertainment GmbH
12/4(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷・有楽町、シネマート新宿ほか全国順次公開
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