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飯島奈美さんに聞く、日々の食卓を味わうということ

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飯島奈美さんに聞く、日々の食卓を味わうということ

NHKのEテレで放送中の『365日の献立日記』という5分間の料理番組をご存知ですか?昭和の名脇役として知られる女優・沢村貞子さんが26年半毎日綴った『献立日記』をもとにフードスタイリストの飯島奈美さんが料理をし、沢村さんの献立を紹介する番組です。

飯島奈美さんに聞く、日々の食卓を味わうということ

沢村さんの『献立日記』には料理名とその材料だけが淡々と綴られており、そこから飯島さんは昭和の時代の食卓に想いを馳せ、沢村さんの料理を想像して作ってきました。そして、飯島さんがこれまで考案し番組で紹介した春夏秋冬96品のレシピが、この春、満を持して書籍化されました。飯島さんが沢村さんと対話するように、自由に作ったレシピ集『沢村貞子の献立 料理・飯島奈美』です。

そこで今回は新刊のレシピ集のこと、沢村貞子さんのこと、そして、日々の食卓を味わい楽しむことについて飯島さんにお話をうかがいました。

 

昭和の時代の気取りのない料理

飯島奈美さんに聞く、日々の食卓を味わうということ写真:齋藤圭吾

映画『かもめ食堂』や『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン』『南極料理人』、連続テレビ小説『ごちそうさん』など、数多くの映画やドラマでおいしい場面を彩ってきたフードスタイリスの飯島奈美さん。

気取りのない昭和の料理を作り続けた沢村貞子さんのことを憧れつつも身近に感じていた飯島さんですが、NHKから『献立日記』の依頼があった時はうれしいと同時にプレッシャーもあったそうです。

―最初に、沢村さんの料理を想像しレシピを考案する中で、最も気を使ったことはどんなことでしょうか?

飯島さん(以下、敬省略):『365日の献立日記』という番組を見てくださる皆さんが、ちょっと作ってみようかな、と思ってもらえるようなレシピを考案するよう心がけました。料理をすることに対して手間がかかると思って欲しくないなと思って。沢村さんの献立には、面倒な料理も結構あるんです。そういう時はめりはりをつけて副菜は簡単にするなど、作りやすいよう工夫しました。

飯島奈美さんに聞く、日々の食卓を味わうということチャーハン、白菜と豚肉のいためもの、肴と豆腐のスープ(書名『沢村貞子の献立 料理・飯島奈美』より。写真:齋藤圭吾)

―なるほど。では、沢村さんの献立の中から、若い世代の人におすすめしたい献立をいくつか教えていただけますか?

飯島:チャーハンがおすすめです。白菜と豚肉のいためもの、魚と豆腐のスープ、チャーハンという献立です。ジャッと炒めて、香ばしく湯気があがるごはんというのはどんな時も人気のメニューです。

あと、リーズナブルに作れるというのもおすすめの理由です。スープは安く手に入る魚のアラで作ります。アラを弱火で20分ほど煮ている間に、いためものとチャーハンを作れるのも良いですよね。

沢村さんの日記の中ではカニ缶を使用していますが、沢村さんはかまぼこが好きだったようなので(他の献立によく出てくる食材だったので)、私のレシピではかまぼこを使いちょっと庶民的なレシピに仕上げました。

―チャーハンは意外とパラパラに作るのは難しいのですが、おいしく作るコツを教えて下さい!

飯島:まず、チャーハンはパラパラにしようとしなくても良いんです。私はしっとりしたチャーハンも好きですよ。でも敢えて言うなら、少なめの分量で作るとうまくできます。大きめのフライパンで2人分を作るくらいがちょうど良いと思います。

 

沢村さんの献立が愛される理由

飯島奈美さんに聞く、日々の食卓を味わうということえび入りおこげ料理、いんげんのおひたし、鮭茶漬け、味噌汁(書名『沢村貞子の献立 料理・飯島奈美』より。写真:齋藤圭吾)

―昭和の時代の沢村さんの献立が世代を超えて今なお人気があり、共感されるのはなぜだと思いますか?

飯島:沢村さんの日記を見てみると、びっくりするような献立が出てきます。例えば、米・米・汁・汁みたいな。あと、同じ副菜が続くことも珍しくない。でも、そういう献立を見るとちょっとほっとします。毎日同じものを食べてもいいんだ、普段の食事なんてみんなそんなものだよね、と安心してしまいます。そんなところが、多くの人の共感を得るのではないかと思います。

一方で、沢村さんは青菜のお浸しをピーナッツバターであえたり、細切り人参とレーズンを合わせたサラダも作っています。いわゆる人参のラペは今では日本でも定番のサラダですが、当時にしてはとても斬新な料理だったはずです。そんなおしゃれな料理にも沢村さんはチャレンジしていました。

あと、味噌汁にセロリを入れていたりもしていたようです。ちょっと驚きの組み合わせですが、意外とおいしかったです。

―沢村さんは粋な女優さんというイメージがあります。

飯島:そうですね。沢村さんは料理本も20冊ほど所有していたようで、中には外国料理の本もありました。自分のレパートリーだけでなく、料理本を参考にして新しい料理にもチャレンジしていて、とても好奇心旺盛な方だったことがわかります。

沢村さんは、女優という職業柄、体調管理のためにあまり外食をされなかったのではないかと思います。その代わり、ときどきちょっとめずらしい料理を自分で作ってみたのかなと。要するに食いしん坊な方だったのだと思います。

 

やっぱりごはんにあうおかずが一番

―今と昔で日本の食はどんなところが変化し、どんなところが変わらないと思いますか?特に日本の食卓で昔から変わらないと思われることは何でしょうか?

飯島: 変わったところは、子供があまり和食を食べなくなってきたことでしょうか?最近は洋食の方が、人気があるのかもしれません。でも、どこの国の人も基本的には自国の料理ばかり食べますよね。最近は海外で和食が人気で、日本のごはんを食べたいと思う外国人がすごく多いんですよ。だから、日本の若い人等ももっと和食を作って食べて欲しいと思います。

変わらないところは、結局は白いごはんに合うものが求められているように思います。いろんな国の料理が身近になり、外食が気軽にできるようになっても、家ではほっとするごはんをみんな食べたくなるのだと思います。そんなところは昔から変わらないと思います。

飯島奈美さんに聞く、日々の食卓を味わうということピーマンのしょうゆ煮(書名『沢村貞子の献立 料理・飯島奈美』より。写真:齋藤圭吾)

白いごはんにあうおかずといえば、沢村さんの献立にある「ピーマンのしょうゆ煮」はおすすめです。ピーマンをしょうゆで煮るの?とちょっと驚かれるかもしれませんが、これが本当においしい。白いごはんにとても合うので、ぜひ作ってみて下さい。あと、「かんぴょうとあつあげのうす味煮」も白いごはんにおすすめです。甘辛く煮るのが定番のかんぴょうですが、うす味煮もとてもおいしいんですよ。

 

作るものに愛着と目標を持つと、料理は楽しくなる

飯島奈美さんに聞く、日々の食卓を味わうということ写真:齋藤圭吾

―本の中で「沢村さんは飾らない毎日の営みの中に楽しみがあることを教えてくれる」とあります。飯島さんが考える毎日の営みの中にある楽しみや、日々の食を味わうこととはどういうことでしょうか?

飯島:例えば、天ぷらを揚げるのは難しいものですが、沢村さんは「今日は上手くできた!」と喜んでいます。料理に合わせて食器を選ぶのを楽しんだり、「レタスを敷こうかな、彩は?」と盛り付けを楽しんだり。ゆで卵、目玉焼きひとつ作るにしても「今日は上手くできた、調子がよかった!」と喜んだり。

作るものに愛着と目標を持つと、料理は楽しくなると思います。日々の食を味わうことは、発想と感想と反省の繰り返しだと思います。

―今回は沢村さんの日記からレシピを考案されましたが、飯島さんは他にも様々なレシピを考案されていたり、料理の監修をされていますね。料理のインスピレーションはどのようなところから得ているのでしょうか?

飯島:旅行に行っていろんな料理を食べることからヒントを得ることもありますが、外食した時にシェフと会話してインスピレーションが湧いてくることも多いです。使っている調味料や意外な食材を組み合わせなど、話を聞いてみるととてもおもしろい。

あと、実際に自由な発想で料理をする中でひらめくこともあります。私は色や味が似ているものを交換してみることがよくあります。おにぎりの中にドライトマトをたたいて入れてみるとか。そう、色が似ている梅干しの代わりです。

―おもしろいですね!新しいアイデアはちょっとした発想から生まれるのですね。では、飯島さんが料理を作る上で大切にしていることは何ですか?想像力でしょうか?

飯島:食べる人のこと考えて作ることです。それが一番ですね、やっぱり。

―料理は愛情!ということですね。沢村さんの「献立日記」でも食卓を共にする旦那様への愛情が感じられました。

 

ルールから解き放たれたら自由に楽しく料理ができるようになる

飯島奈美さんに聞く、日々の食卓を味わうということ天ぷら、玉ねぎの酢の物、豆腐の味噌汁(書名『沢村貞子の献立 料理・飯島奈美』より。写真:齋藤圭吾)

―今、日本はもちろん世界中の人達が、家から出られず、不自由な生活を強いられています。その中で料理が気分転換になったり、食事が活力になったりしていると思います。飯島さんご自身も料理や食事がくれるパワーを感じることはありますか?

飯島:もちろんありますよ!「よっしゃ、これが終わったらごはんだ!」みたいな感じで気合いを入れて仕事をしたりしています。疲れて家に帰った時、お母さんがごはんを作ってくれていたらすごくうれしいじゃないですか。誰かのためにごはんを作ること、誰かが自分のためにごはんを作ってくれること、その気持ちがうれしいしパワーになりますよね。ありがたいことだと思います。

―そうですね。今は特に、家族や親しい人達と食卓を囲むこと、毎日おいしくごはんがいただけること、そんな当たり前の日常がとてもありがたく思えます。とは言っても、沢村さんのように毎日、丁寧に料理を作るのは億劫な人も多いはずです。最後に、料理が毎日のルーティーンでしかなく、嫌になっている人へメッセージをお願いします!

飯島奈美さんに聞く、日々の食卓を味わうということ写真:齋藤圭吾

飯島:料理を面倒くさいと思わず、いろいろ作るチャンスがあると思って気持ちを切り替えてみることです。どんどん自分の好きなものを作ってみたり、家族の好きなものを自由な発想で作ってみてはいかがでしょうか?

肉じゃがを塩味で作ってみるとか、味噌味にしてみるとか、バターを入れてみるとか。ポテトサラダに年中きゅうりを入れなくてもいいですよね。冬はブロッコリーでもいいんじゃない?と自分の好きな食材、手順で、自分の好みに合ったレシピで作ったら良いのです。こうしなきゃ、っていうルールから解き放たれたら自由に楽しく料理ができるようになると思いますよ!

 

毎日の献立作りに苦労している多くの人に、飯島さんのこの言葉が届きますように。そして、困った時は、ぜひ『沢村貞子の献立 料理・飯島奈美』のページをめくってみて下さい。きっと助けてくれるはずです。飯島さん、この度はありがとうございました!

 

  • ■書籍情報
  • 沢村貞子の献立 料理・飯島奈美
  • 著者:飯島奈美
  • 出版元:リトルモア

 

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