時計が21時をまわる頃、1次会が終わり2次会へ向かう人々の流れが街にあふれています。料理もお酒もほどほどに、賑やかに過ごす時間は正直もうお腹いっぱい。でも最後に甘いものを食べたいし、ゆっくりと静かな時間を過ごしたい…。そんなときは、バーを訪れてみてはいかがでしょうか?
今回ご紹介するのはラム酒とスイーツのバー。四谷三丁目の交差点にあるビルの4Fに『bar dress』はあります。
お話を伺ったのは、バーテンダー歴29年という店主の森谷義則さん。ラムの魅力や楽しみ方、そして『bar dress』についてお話を聞いてきました。
ラム酒とスイーツのバー『bar dress』
森谷さんがバーテンダーを始めたのは23歳の頃。30歳のときにご友人と海外でイタリアンレストランを、そして帰国後は36歳のときに渋谷でバーを始め、その後も渋谷にあるダイニングバーでバーテンダーをされていました。ですが渋谷の再開発があり、次のお店を探すことに。そんなときにオープンしたのが、PARIS magでもご紹介した『ドレスのテイクアウト店』。
「友人に紹介してもらった場所で、一体何ができるかなと考えてサンドイッチをつまみにちょっと飲めるというようなお店にしたんです。次のお店を始めるまでの間と思っていたので、正直1年で辞めるつもりでした(笑)。でも、自分が想像した以上に人気も出て3年続きましたね」。
当初1年で辞めるつもりだったという『ドレスのテイクアウト店』ですが、惜しまれつつも閉店。そして2018年4月、四谷三丁目に『bar dress』をオープンしました。
店内にはおよそ250種類ものラム酒があります
『bar dress』は、ラム酒とスイーツのバー。取り扱うお酒はラム酒のみ、料理はなくスイーツのみです。もともとバーというのは、まず食事を楽しんだあとに、お酒を楽しみに来る場所だったのだそう。
「最近は1次会で料理もお酒もたくさん飲まれますけどね。かつてのバーの文化を絶やしたくないなあと思っています。ラム酒のバーにした理由は、ラムが好きだから。バーテンダーとしてもちろん知識はありますが、正直に言うと他のお酒にあまり興味がないんです(笑)。興味がないのに、興味がある風に売るのはやめようと思って。もう好きなものだけでいいんじゃないかなと思うんですよ」そう笑って話す森谷さん。
森谷さんにラム酒の好きなところを伺うと「一番は味ですが、私は寒いところが苦手なんですよ。だから寒いところのお酒を飲むと、なんだか合わない気がしていて…。内向的になって気が滅入っちゃうんです(笑)」と、ちょっと意外な答えが。
「ラムは暑い地域で生まれたお酒。ラムを飲んで荒れた人は見たことがないし、明るくなれる気がします」と森谷さん。
『ドレスのテイクアウト店』の頃から人気のレモンケーキ。ラム酒に合うよう、さらにアレンジを加えたそう
また、『bar dress』のスイーツはすべて森谷さんの自家製。若い頃バーテンダーとして入ったお店でなんとパティシエを担当することになり、その経験が今に生きているそう。
この日ショウケースに並んでいたのは、ガトーショコラにココナッツケーキ、レモンケーキ、バナナケーキ。これらの焼き菓子は、テイクアウトはしていないものの、バーを利用したお客さんだけが特別にお土産として購入することができます。
世界で3万種類以上!ラムってどんなお酒?
ところで、みなさんはラム酒がどのくらいの種類が存在するか知っていますか?なんと3万種類ほどあるんです!森谷さんにラム酒のことや魅力を教えていただきました。
ラム酒は、サトウキビから砂糖を作るときに残った廃糖蜜から造られる蒸留酒。作り方によって、スペイン系・イギリス系・フランス系の大きく3つに分けられます。ざっくりいうとスペイン系は甘く、イギリス系は無骨でしっかり重め、フランス系は華やかで繊細…とそれぞれ特徴も異なります。
ラムの褐色は、実は樽の色。樽でじっくり寝かせることで、サトウキビのクセが抜けて熟成感が出るそうです。反対に、ホワイトラムと呼ばれる透明なラム酒は蒸留したてで、樽で寝かせないためクセも強いのだそう。
グラスの形によって、ラムの香りの立ち方が異なるのだとか
ラム酒の飲み方はストレートがおすすめとのこと。お酒が弱いという人ほど割りがちですが、ストレートで少しずつゆっくりと、水を間に挟みながら飲むことで、ラムの香りや味が落ちないまま楽しめるのだそうです。もちろん、ロックや水割り、ソーダ割りなど、お好みで割るのもOK。また、ホワイトラムはクセが強いので、ラム初心者の方は色のついている穏やかなものから飲んでみるのが◎。
バーテンダーがきちんと説明できればメニューは必要ないと森谷さん。ついつい会話が弾んでしまいます
私自身、ラム酒をあまり飲んだことがありませんでしたが、「多分、みなさんそうだと思います。ラムに詳しい人はそんなにいないですから、あまり心配なさらず」と森谷さん。
「メニューはないので、『どんなものが飲みたいですか?』とお客様の好みを伺っておすすめしています。ラム酒は味にものすごく幅があるので、甘いと言ってもすごく甘いのがいいのか、ドライなのがいいのか、そんな風に好みを伝えてください。例えば『カカオの香りがするのがいい』、『ブーケっぽいのがいい』とかね。あとは飲み方に合わせて、ロックならこのラム、ストレートならこのラム、という風におすすめします」。
心地いい時間のなかで、ラム酒とスイーツを堪能
いよいよ、ラム酒とスイーツをいただきます。今回は、森谷さんに好みをお伝えして、4種類のラム酒を飲み比べすることに。
こちらは、ドミニカの「ロンマツサレム」(スペイン系)。「あ!これは…」と、チョコレート菓子に使われているような、馴染みのある香りです。色のついたラム酒は、主に食後酒として楽しみます。ヨーロッパで、食後に甘いものを食べるのと同じ感覚ですね。
『bar dress』では、ラムに合わせてお通しにスイーツを出してくれます。「ロンマツサレム」には、3色コーヒーゼリーを。ブラックコーヒーのゼリーとカフェラテのゼリー、そしてクリームチーズムースの3層になっています。ほろ苦いゼリーとスペイン系の甘いラムとの相性もぴったり。
こちらは、グアドループの「モンテベロ」(フランス系)。フランス系のラム酒は、アグリコールというちょっと贅沢な作り方をしているのだそう。
「他のラムは砂糖づくりがメインなので残った廃糖蜜を蒸留しますが、フランス式のアグリコールは砂糖を作りません。ラム酒のためにサトウキビを作っているんですよ」と森谷さんが教えてくれました。
「モンテベロ」と一緒にいただいたのは、アイスケーキ。ラム酒に漬けたドライフルーツをヨーグルトにまぜ、ケーキにのせて冷やし固めてアイスにした一品。ひんやりと、そして口の中で溶けていく感覚。そして、そこへラムをひと口。フランス系のラムの華やかな香りとフルーツの風味がマッチします。
こちらは、ジャマイカの「ハムデン」(イギリス系)。最初は薬品のような香りで、グラスから体温が伝わると少しずつフルーツのような甘い香りに移り変わっていきます。しっかりとしていてスパイシーなのに、重さを感じさせない不思議な味わい。
しっかりとした味わいの「ハムデン」には、チェリーパイを。果実がぎゅっと詰まって、そして素朴ながらに存在感のあるパイ生地が絶妙。
夜に食べる甘いものって、どうしてこんなにもおいしいのでしょう。森谷さんが作るスイーツのラインナップは、その日そのときで変わりますが、いつも7種類ほどを用意しているそうです。
こちらは、マルティニークの「サンテティエンヌ」(フランス系)。同じフランス系でも、白ラムということもあり、少しクセの強いラムです。最初にいただいた「モンテベロ」とは全く違う香り、そしてドライな味わいでおもしろい!「ラムは味の幅が広いんです」という森谷さんの言葉に納得です。
こんな風に、ラムを飲み比べしながらおいしいスイーツをじっくりと味わう。なんとも贅沢なひと時。森谷さんに「このラムはね…」とラムの産地や特徴などを教えてもらい、どんどんラムの魅力にはまってしまいました。
カウンター席からは、四谷三丁目の交差点が望めます
料理を楽しんだあとは、ぜひバーへ。ゆっくりと落ち着いた時間が流れるなかでいただくラム酒とスイーツのマリアージュをお楽しみください。もちろん、お土産のケーキもお忘れなく。
- ■お店情報
- bar dress(バードレス)
- 住所:東京都新宿区四谷3丁目8番地 三橋萬寿ビル4F
- 営業時間:19:00〜翌朝5:00 ※早く閉まることもあります
- 定休日:日曜日
- ホームページ|http://www.dress-4f.com/
- Instagram|https://www.instagram.com/bar_dress/
※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。
■一緒に読みたい記事