“フランス人っておしゃれでかっこいい”。なんとなくそんなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。今回紹介する中島たい子さんのエッセイ本『パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら』で描かれるのは、パリ郊外に住む“ロズリーヌ叔母さん”とその家族の等身大の日常。
ラフに焼き上げられたバゲットや、身近にあるものでパパッと作られたキッシュが感動するほどおいしかったり、壊れかけのサングラスをかける姿がなぜかとてもスマートに思えたり、毛玉がついたセーターがおしゃれに見えたり…。
フランス人のリアルを綴ったこの1冊。私たち日本人の日常と比較しながら読み進めていけば、「フランス人ってかっこいい」というイメージに「なぜならば」という答えが見えてくるはずです。
チャーミングで筋の通ったロズリーヌ叔母さん一家の日常
日本人の叔父がフランス人と結婚したことで、フランスに親戚がいるという著者の中島たい子さんは、冒頭でこう語っています。
「日本人(とくに女子)は、フランス人を過剰評価してない?」
壊れたサングラスも毛玉だらけのセーターも気にすることなく着用し、洗濯物は外に干さずにキッチンのテーブルに広げておく…何事にもマイペースで独自のルールを持つロズリーヌ叔母さんとその家族の言動に、いちいち驚かされてしまいます。
確かに、一見すると「かっこいい」でも「おしゃれ」でもない言動の数々。でもその背景には「これがベスト」だと思う理由がきちんとあり、「よそと違ってもそれが1番」という、いかに自分が自然体で気持ちよく過ごせるかを重視するポリシーのようなものが隠されています。
良いと思うものには「セ・ビヤン!(いいわね)」と喜び、ダメだと思うものにははっきり「ノン!」。そのわかりやすい意思表示は、ロズリーヌ叔母さんに限らず多くのフランス人にも言えることなのかも。そんなフランス人の気質が見えてくると、ますます彼らがチャーミングに見えてくるから不思議です。
「簡単でテキトー!でもおいしい!」思わず真似してみたくなるレシピの数々
灰色がかった焼き色とバリッと固い食感の四角いバゲット、カフェオレボウルに入ったディジョンマスタード入りのドレッシング、泡立てて混ぜてガラス瓶で冷やすだけの4ステップで完成するマロンアイスクリーム。本書に登場するロズリーヌ叔母さんと、その娘のソフィーが作るレシピは、どれも魅力的です。
思わず試してみたくなってしまうのは、いずれも身近な素材で作ることができ、簡単でおいしそうだから。
手の込んだ料理は確かにおいしくて、作り上げた充実感も味わうことができますが、毎日食べるものなら「簡単でおいしい」ものがベスト。そんなレシピの数々は本書の巻末にまとめられています。印象に残ったレシピを試してみてはいかがでしょうか。
中島たい子さんが、バゲットに板チョコを挟んだシンプルなチョコサンドが、フランスの空の下で食べると最高においしく感じたように、豊かに感じられるものはその土地や季節など、そのときどきで違います。
感性を優先するロズリーヌ叔母さんのフランス流スタイルに見習って、彼らのような自然体で毎日を楽しめたなら、もっと風通しよく、リラックスした日々を送れるのかもしれませんね。
- ■書籍情報
- 署名:パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら
- 著者:中島たい子
- イラスト:イザベル・ボワノ
- 出版元:ポプラ社
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