武蔵野音楽大学と日本大学芸術学部、武蔵大学。3つの大学と庶民的な住宅街が共存する街、東京都練馬区江古田。
駅から伸びる活気ある商店街を抜けると、現れる古民家風の建物が『パーラー江古田』です。天井の高い店内に入ると、木のぬくもりを感じる空間が広がっています。
店員さんも気さくに話しかけてくれるので、まるで自宅のようにくつろげます。居心地の良さから長居するお客さんも多いのだとか。
店の奥には小麦粉をひく石臼が。「小麦粉がどんな風にできるのか、子どもたちに見せたいと思って」と店主の原田浩次さん。こんな風に粉をひく様子を見るのは大人だって初めて。親子で夢中になって見るお客さんも多いそうです。
挽いた粉は、「全粒粉くるみパン」や「カンパーニュ」をはじめとする、ハード系のパンに使われているのだそう。
ちなみに、小麦粉は挽きたてよりも少し落ち着かせたほうがパン作りには向いているというのが定説。しかし『パーラー江古田』では、あえて挽きたてをつかうなどの新しいトライもしているのだそう。石臼で挽いた粉は香りも華やか。気になる人はぜひ試してみてくださいね。
店名の「パーラー」に込められた思い
ところで気になるのが、店名の「パーラー」という言葉。
「基本的にはお客さんをおもてなしする施設に付けられる名称ですが、私の店は沖縄にあるパーラーが原点です。沖縄にあるパーラーは、きちんとした食堂のようなものからトラックを改造したもの、海の家のような簡素な建物まで様々。沖縄で、一番簡単に飲食店を開く時につけられる名前がパーラーなのです」
他には、沖縄ぜんざいというかき氷のようなスイーツがメニューにあるのがパーラーの特徴なのだとか。ちなみに「パーラー江古田」のメニューにもちゃんとありました(夏限定)。東京ではなかなか見かけることのないメニューなので、トライする価値ありですよ。
ここは「パーラー」なので、あくまでも店内で食べるのが基本。気に入ったパンがあれば、そのままテイクアウトして欲しいという思いからショーケースにもお持ち帰り用のパンを用意しています。
現在、お持ち帰り用のパンは30種類以上。
こんなにメニューが増えたのは、店内で食べるサンドイッチのパンを具に合わせてお好みで選んでもらいたいという思いから。
具のサルシッチャやハム、パテなどもできる限り店内で作るのがこだわり。なんでも手作りしてしまう原田さん。時間がなくなってしまうのでは?と尋ねると、「良い物を食べてもらいたいから『自分たちで作る』以外の選択肢はなかった。時間の問題もありますが、そこは譲れませんでした」とのこと。
どんなことでも面倒がらずに手間暇をかけ、時間や場所を惜しまず自分の手で作る。アイデアと工夫で乗り切るという誠実な姿勢がこの店を支えてるのですね。
ボリューミーな「トーストセット」&「サンドイッチ」
店内でいただけるメニューで人気があるのは「トーストセット」と「サンドイッチ」。
「トーストセット」は、厚切りの角食に3種類のパンのスライス、サラダとバター。たっぷり盛られたパンに思わずびっくりしてしまいます。
角食は厚みもあって食べ応えある大きさ。バターを塗って頬張れば、ザクッとした食感も楽しい1品。
「くるみとイチヂク」など、ハード系のパンもいろいろ食べ比べできるので、まずはこちらを注文してお気に入りの味を見つけてみては?
「サンドイッチ」は具もパンも好みの物を選べます。「チキンとまいたけのオーブン焼き」は、まいたけの食感と香り、お肉のジューシーさをダイレクトに感じられるサンドイッチ。パンは今回フォカッチャを選びました。
調味料は厳選した塩とオリーブオイルのみという、素材の良さを引き立てるシンプルな味付け。カリカリのクラストとジュワッと溢れ出す肉汁、きのこのプリプリした食感が楽しめます。
定番サンドイッチはこれ以外に、厚切りトマトがおいしい「フレッシュトマトとチーズ」、その時期一番おいしく食べられる野菜を選んではさんでくれる「季節の野菜のオーブン焼きバルサミコソース」があります。
2種類選んで両方の具を入れたボリューム満点のサンドもできるそうなので、お友達と一緒に訪れた時は、シェアするのも良いですね!
「店をやるなら絶対に置きたかった」と原田さんの夢だったレバー式のエスプレッソマシーンで淹れる自慢のエスプレッソやラテをはじめ、コーヒーやワイン、ビールなどドリンク類やお酒も充実。
選んだメニューにどんなドリンクやお酒が合うか店員さんと話しながら決めるのも楽しみのひとつになりそうです。
目指すは江古田のシンボル的な「パーラー」
惜しみなくたっぷり盛られたパンやサンドイッチの具。店員さんのあたたかな接客。そして店主自身の個性が魅力となって、素敵なお客さんが集まる空間が広がっていました。
「パーラー」という店名にはもうひとつ定義があるのだそう。それは、その土地の名前をつけられるのは、もっとも格式の高い店だけということ。
「この店は、江古田という土地の名前を一番最初に付けたパーラーなんです。江古田といえば『パーラー江古田』と誰もが思い出すような存在になりたいですね」と原田さん。
この町のシンボル的な店になるには、そう時間はかからないはずです。
※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。
■一緒に読みたい記事