少しずつ、本格的な冬の寒さが近づいてくる11月。気候の変化と共に年末の慌ただしさも増していく季節です。そんなとき、身体も心もほっこり温まる、おいしいスープはいかがですか?
季節の食材を使ったスープが人気のお店『branch(ブランチ)』は、中目黒の隣駅、祐天寺駅を下りてすぐの商店街にあります。
「カフェでもなく、レストランでもなく、“食堂”というのがぴったりかな!」と話すのは店主の佐伯奈緒美さん。食堂がぴったりというお店のことや佐伯さんのこと、お料理のことなどお話を伺ってきました。
気軽さがうれしいフレンチ食堂
『branch』は今年の10月1日で3周年。もともと佐伯さんの友人が作ったお店で、彼らがお店を手放すことになったとき、偶然にも店舗を探している料理人仲間に再会したそう。
「その彼がお店のオーナーなのですが、彼自身イタリアンのお店を営んでいて『俺は自分の店もあるから奈緒美ちゃんがこのお店やってみない?』と言われたんです。友人の縁がきっかけで始めました」と佐伯さん。現在はお店をおひとりで切り盛りしています。
これまでずっと料理をやってきたという佐伯さん。まず、18歳のときに料理の専門学校へ通うと同時に、銀座のフランス料理店で見習いとして1年、卒業後に就職し2年の合わせて3年間働いていたそう。「本当は和食がやりたかったんですよね」と話す佐伯さんですが、その当時女性にとって和食の道は狭き門だったのだそうです。
「フランス料理に思い入れがあって始めたわけではなかったので、『きっとフランス料理よりもおいしいものがあるはず!』と納得していなかったんです。だから、違う世界の料理も知りたいと思うようになって、海外に行くことを決めました。それもイギリス(笑)。銀座のシェフには大反対されましたが、『もうチケットも取ったので行きます!』と言って。
イギリスを拠点に、ヨーロッパを食べ歩きしてみて、結局フランス料理がおもしろかったんですよね。それで納得して、初めて自分の意思でフランス料理をやろうと決めました」。
帰国後はフランス料理店で働き、そこで同じくフランス料理を志す旦那さんと出会ったのだそう。新婚旅行では4ヶ月間フランス中の星付きレストランを食べ歩いたり、それぞれフランスでひとり暮らしをしたり!その後、日本に帰ってくるタイミングで友人に誘われ五つ星ホテルである『フォーシーズンズホテル』へ。世界各国の有名シェフとともに10年、フランス料理をはじめさまざまな料理を作ることで多くの学びを得たと言います。
銀座のフレンチを始め、さまざまなレストランでフランス料理の経験を積まれてきた佐伯さん。『branch』では、スープをはじめ、サンドイッチやキッシュ、煮込みなどカジュアルなフランス料理が定番メニュー。このスタイルに決めた理由を教えてもらいました。
「南仏プロヴァンスに第2のおかぁちゃんがいて、彼女からは3年間フランスのレストランで働いて得たものとは別の、フランスのおふくろの味も色々食べさせてもらいました。また、これまでいろんなレストランを見てきているからこそ、その大変さや難しさもわかっています。私ひとりでお店をやるというときに、日本の暮らしのなかでお母さんが作るようなごはんなら、ひとりでもできると思ったんです。気軽に“食堂”みたいな感じで来てもらえるとうれしいです。『小腹が空いたから』『おやつが食べたくなって』『ちょっとお茶したいな』という、気軽で自由な使い方をしてもらえたらうれしいですね」と佐伯さんが話してくれました。
季節の野菜を使ったスープと人気のチーズパン
さっそく、目的の「本日のスープとパン」をオーダー。この日は、バターナッツかぼちゃのスープと新さつまいものスープの2種類から選べました。
新さつまいものスープ
こっくりと少し重めのスープに、トッピングされているのはグリルしたさつまいも。ひと口いただくと、さつまいもの甘さが口いっぱいに広がります。さらにチャイのスパイスもふりかけられていて、カルダモンの香りがまた食欲をそそります。
お店で使うのは毎朝届けられる産直野菜。夏はさっぱりしたトマトベースの冷製スープガスパチョや、グリーンピースやかぶを使ったスープ、秋冬になると芋系のスープなど、季節によってさまざまなスープを楽しめます。
スープとセットの人気のチーズパン。スライスしたパンの上にたっぷりのチーズをのせ、オーブントースターでこんがり焼き上げます。チーズは、ドイツのモッツァレラチーズをはじめ、数種類のチーズを細かくブレンドされたシュレッドチーズを。とろーりとろけたチーズはもうたまりません!
『シェ・リュイ』の大きなブール
「パンはいろいろ探した結果、今は『シェ・リュイ』のブールを使っています。バゲットよりも柔らかくて食パンでもなくて、この大きなブールに辿りついたんです。大きく焼いたパンは、中の食感がまったく違うんですよ!本当にもちもち、ふわふわしておいしいんです」と佐伯さんが教えてくれました。
佐伯さん自家製のドリンクメニュー
ハーブティー「ベルベイヌ」もオーダーしました。日本ではあまり聞き慣れないメニューですが、フランスでは、必ずと言っていいほどほとんどのカフェにあるメニューなのだとか。
「ベルベイヌは消化にいいハーブで、フランスで食べ歩きしていて、『もうこれ以上食べられない!』というときでも、ベルベイヌを飲むとすーっと落ちていく感じがします。デザートもペロリと食べられちゃうんです(笑)」と佐伯さん。
日本では、あまり見かけることもないそうで、『branch』では佐伯さんが苗から育てて作る自家製茶葉。そのほかのカモミールとレモングラスをブレンドしたハーブティーも佐伯さんのオリジナル。
こちらは人気メニューの自家製のレモネード。レモンはもちろん、季節によって新生姜やキンカンも使っているのだそうでとても具だくさん。
「中身も全部食べられるように煮込んでいるので、ぜひ。飲むというより、食べるがメインのレモネードかもしれません」と佐伯さん。
ほどよい苦みとフレッシュさですっきり。きび砂糖のやさしい甘さに新生姜のピリリとした刺激も絶妙です。これからの肌寒い季節には、お湯で割るでホットレモネードもおすすめです。
『branch』には、季節のフルーツがのったフロマージュブランというフレッシュチーズのタルトやバナナブレッド、レモンケーキなどスイーツもあります。ブランチはもちろん、ティータイムやちょっとひと息つきたいときにもぴったりです。
「branch」に込められた意味
「brunch(ブランチ)」は、昼食(lunch)を兼ねて遅めの時間に食べる朝食(breakfast)という意味。でもよく見てみると、お店のスペルは「branch」になっています。
「そうなんです、お昼の時間帯をという意味もあるのですが、英語で書くと木の枝の『branch』なんです。友人でありこのお店のオーナーが名付けてくれたのですが、彼自身が営むイタリアンのお店から派生して、『木の枝のように広がって、いろんな人と繋がりができるといいね』という意味が込められているんです。私も最初、あれ?綴りが違うと思いました(笑)」と佐伯さんが教えてくれました。
店内には、佐伯さんの友人の帽子作家の方の作品も
黄色や白、青色などフランスのヴィンテージリネンで作るオーダーメイドの鞄や、バイヤーをする友人が買い付けてきた古着なども。まさにいろいろな繋がりが垣間見えます。
そしてなにより、その繋がりが続いていくのは、気さくで朗らかで、あたたかい佐伯さんの人柄があるからこそ。おいしいスープとパンと、そして居心地よい空間の中で、のんびりとした時間を過ごすことができました。佐伯さんの作るごはんは、きっとお腹も心も満たしてくれるはず。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?
- ■お店情報
- branch(ブランチ)
- 住所:東京都目黒区祐天寺2-15-8
- TEL:090-2214-0727
- 営業時間:[平日] 10:00〜17:00 、[土・日・祝]11:00〜17:00
- 定休日:不定休
- ※記事の内容は取材当時のものです。
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