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    仏サントル名物シェーヴル(雌ヤギ)のチーズを使ったサラダプレート

    こんにちは。菓子・料理研究家の山本ゆりこです。前回のリヨンのあるローヌ・アルプ地方から北西に移動し、今回訪れるのはサントルサントルは「Centre」と綴り、「中央」や「真ん中」という意味です。その名の通り、フランスの中部に位置し、現在は名称だけが「サントル=ヴァル・ド・ロワール」になりました。

    サントルの特産品といえばシェーヴル(雌ヤギ)のミルクで作るチーズです。現在、サントル=ヴァル・ド・ロワールにはAOP(※)を持ったチーズが5種類もあり、それぞれの形や色、味わいに個性が光っています。シェーヴルチーズを使ったサラダのレシピと共に、サントルの旅へ!

    ※A.O.P.について
    フランスにもともとあった認証制度A.O.C.にならい、1992年に生まれたヨーロッパの原産地保護呼称。
    このマークがついていれば、生産品がその地域で正当に生産されたものであることを証明しているので、味や品質のよいものを選びたいときの目安になります。

     

    Salade de chèvre chaud(温かいシェーヴルチーズのサラダ)の作り方

    温かいシェーヴルチーズのトーストがのったこのサラダプレートは、パリのカフェでも人気のメニュウです。使用するシェーヴルチーズは、厚さ1cmにスライスしたものであれば種類は問いません。カンパーニュの代わりにバゲットや三角にカットした食パンでもOK。

     

    【材料】(1人分)

    ・葉野菜(※1):80g
    ・ミニトマト:4個
    ・ラディッシュ:1個 ※きゅうりでもOK
    ・くるみ(ローストしたもの):5個
    ・ベーコン:1枚(20g)

    <ヴィネグレットソース>
    ・オリーブオイル:大さじ2
    ・白ワインヴィネガー:大さじ1/2
    ・塩:小さじ1/5+適量
    ・粗挽き黒こしょう:適量
    ・はちみつ:小さじ1
    ・粒マスタード:少々

    <温かいシェーヴルチーズのトースト>
    ・シェーヴルチーズ(厚さ1cm):2枚 ※ドゥミ・セックがおすすめ
    ・カンパーニュ(厚さ1~2cm):1枚
    ・バター(またはオリーブオイル):少々
    ・エルブ・ド・プロヴァンス(※2):小さじ1/4

    ※1:流通しているフリルアイス、グリーンマリーゴールド、モコヴェールなどの水耕栽培の葉野菜は、無農薬かつ手軽でおすすめです。
    80gは水耕栽培の葉野菜の約1個分になります。アクセントにサラダほうれん草やルッコラ、クレソンなどを加えても◎。

    ※2:エルブ・ド・プロヴァンスはプロヴァンス発祥のミックスハーブです。ない場合は、タイム、ローズマリー、オレガノなどのドライハーブをミックスして代用してください。

     

    【作り方】

    1.葉野菜の下ごしらえをします。

    ・葉野菜はへたや根(葉の接合部)を取り除いて、葉を1枚1枚はがしながら、流水に当てます。ベビーリーフなどの葉が小さいものは、ザルなどに入れ、流水をまわしかけましょう。

    ・サラダスピナーまたはザルで、葉野菜の水をしっかり切ります。

    ・食べやすい大きさにちぎってお皿に盛り、ラップをかけ、冷蔵庫に入れておきましょう。

     

    2.その他の材料をカットします。

    ・ミニトマトは縦半分、または縦に4等分に切ります。ラディッシュは厚さ1~2mmの薄切りに、くるみは半分に切ります。

    ・ベーコンは1cm幅に切り、ヴィネグレットソースの材料内のオリーブオイル大さじ1で、カリカリになるまで焼きます。フライパンに残ったオリーブオイルはとっておきましょう。

     

    3.ヴィネグレットソースを作ります。

    ・小さい器に白ワインヴィネガー、塩、こしょうを入れ、小さい泡立て器でかき混ぜながら、塩をよく溶かします。

    ・はちみつ、粒マスタード、オリーブオイル大さじ1([2]の残り)、ベーコンを炒めたオリーブオイル大さじ1を順に加え、その都度よく混ぜます。味をみて、足りないようなら塩を加えます。

     

    4.温かいシェーヴルチーズのトーストを作り、仕上げます。

    ・パンを半分に切り、それぞれの片面にバター(またはオリーブオイル)を塗り、シェーヴルをのせ、エルブ・ド・プロヴァンスをふりかけます。

    ・アルミホイルにのせ、オーブントースターでパンの縁に焦げ目がつくまで焼きます。

    ・葉野菜のまわりにミニトマト、ラディッシュ、くるみ、ベーコンを彩りよくのせ、ヴィネグレットソースをまわしかけます。温かいシェーヴルチーズのトーストを中央に置いたら完成。

     

    食後にぴったりな「ひと口シェーヴルチーズ」

    こちらはスイートな「ひと口シェーヴルチーズ」。口休めや、食後のデザートに、おすすめです。もちろんワインとの相性もバッチリですよ!

     

    [くるみ&いちじくのジャム] 

    【材料】(2個分)
    ・シェーヴルチーズ(厚さ1cm):2枚
    ・くるみ(ローストしたもの):3個
    ・いちじくのジャム:適量
    ・粗挽き黒こしょう 少々

     

    【作り方】

    1.シェーヴルチーズに刻んだくるみ、いちじくのジャムの順にのせる。

    2.[1]にこしょうをふったら完成。

     

    [りんご&ローズマリーはちみつ] 

    【材料】(2個分)
    ・シェーヴルチーズ(厚さ1cm):2枚
    ・りんご(皮つき):20g
    ・レモン汁:少々
    ・はちみつ:10g
    ・ローズマリー(葉・フレッシュ):10本
    ・ローズマリー(飾り用):2枝

     

    1.小さな耐熱容器にはちみつとキッチンばさみで細かく切ったローズマリーを入れ、電子レンジ(500W)で約20秒加熱する。

    2.りんごはせん切りにし、レモン汁をふりかける。

    [1]とりんごを和え、シェーヴルチーズにのせて、ローズマリーを飾ったら完成。

     

    意外と汎用性の高いシェーヴルチーズ。お店で見かけたら、ぜひチャレンジしてみてください。

    今回ご紹介したレシピは、どちらも、冷やした白やロゼがよく合うので、ペアリングも楽しんでみて!

     

    種類も豊富な雌ヤギのチーズ「シェーヴル」

    フランスでもシェーヴルチーズのことを「シェーヴル」とシンプルに呼ぶので、ここでも「シェーヴル」と呼ばせていただきます。サントルの特産品でもあるシェーヴルは、まさに今が旬です。

    シェーヴルチーズは牛や羊のミルクで作るチーズに比べると、比較的小ぶりなこと、棒状や台形など様々な形状があること、木灰粉をまぶすタイプがあること、ひとつひとつにラベルがついていることなど、ならではの特徴があり、見ているだけで楽しくなります。


    サントルのフロマジュリ(チーズ屋)にて。藁の上に、灰をまぶしたタイプの台形と棒状のシェーヴルチーズが並んでいます

    現在、サントル=ヴァル・ド・ロワールには、A.O.P.を持つチーズは5種類あり、すべてシェーヴル。

    日本でも知られている、直径4~5cmの丸いコロンとした形が特徴のクロタン・ド・シャヴィニョルや台形をしたヴァランセなどがそうです。

    シェーヴルチーズは、フレッシュ(フレ)、やや熟成したもの(ドゥミ・セック)、熟成したもの(セック)と熟成度によって名前がついており、購入するときに好みの熟成度を伝えます。フレッシュはさわやかな酸味となめらかな口当たりがあり、やや熟成したものは、水分が飛び、コクとほっくりとした食感が出てきます。熟成したものは、さらに凝縮されて旨味とコクが増し、ミルキーかつナッティーな味わいに。私自身は、熟成された「セック」党で、薄めに切って、それだけでいただいても美味です。

    お城とシェーヴルで有名なサントルの街ヴァランセにて。ヴァランセ城を訪れたとき、城内のカフェ・レストランでいただいた温かいシェーヴルチーズのサラダ

     

    女流作家ジョルジュ・サンドが描いた幻想的な風景

    サントルには「フランスの穀倉」と称される広大なボース平野があり、ヨーロッパ有数の小麦の産地として知られています。

    そして、中央を流れるロワール河流域は、約2000年の歴史を持つ「ロワールワイン」の産地です。


    ロワールワインはフランスを代表する白ワインの「サンセール(ボトル左)」や「プイィ・フュメ」など白ワインが約45%を占め、ロゼ、赤、発泡と続きます

    Pain bénit(パン・ベニ)はパイのような郷土料理。小麦粉の産地らしくパイ生地を使った料理やスイーツが多いです


    サントルといえば、りんごをキャラメリゼさせたお菓子「タルト・タタン」の発祥地。19世紀に、このホテル・タタンの厨房で誕生しました

    中世後期には王宮が置かれ、ルネサンス期になると、ロワール河のほとりには、シャンボール城やブロワ城など豪華絢爛な城館が建てられました。これらを巡る「ロワールの古城巡り」は、サントルの観光の目玉になっています。

    王侯貴族に愛され、品のあるフランス語が発達したともいわれるサントル。この地方出身の女流作家ジョルジュ・サンドの綴るフランス語はとても美しいと話してくれたフランス人の知人の言葉が、思い出されます。


    サントルの田舎の運河沿いを歩いていると、サンドに出会えそうな気持ちになります

    サンドの小説の中に描かれている森や運河、沼などの自然描写は、彼女自身が人生の多くを過ごしたサントルの田園風景そのもの。

    今でも、サントルの田舎を訪れると、サンドの小説に迷い込んだような幻想的な風景に遭遇できるのです。

     

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