広い湯船に足を伸ばしてゆったりつかり、気まぐれにお隣さんとの会話を楽しむ…東京都ではわずか470円で利用できる銭湯は、自宅ではで味わえない“癒やし”と“交流”を与えてくれる場所です。
88年の歴史を持つ錦糸町の銭湯『黄金湯』がリニューアルオープンしたのは2020年8月のこと。真新しい木枠の引き戸から一歩中に入れば、スタイリッシュな内装と、カウンターに設置されたビールサーバーやDJブースに、「これまでの銭湯とは何かが違う」という印象を受けるはず。
「銭湯文化を次世代に繋ぎたい」というとある夫婦の想いから生まれ変わった、下町銭湯の魅力をご紹介します。
銭湯をこよなく愛する夫婦のこだわりを詰め込んで…
オーナーである新保さん夫婦が『黄金湯』のリニューアルを決意したのは、今からおよそ2 年前。この場所からほど近い押上の名物銭湯「大黒湯」を営む卓也さんに、『黄金湯』の元オーナーから「そろそろ店仕舞いしようかと思っている」と話を持ちかけられたのがきっかけだったそう。
「銭湯は、営業時間が長い分人手も不足しがちで、定期的なメンテナンスにはまとまった資金も必要です。さらに後継者不足を課題として抱えているところも多く、“廃業”を選択する銭湯が増えてきました」
メディテーション効果もありそうな水風呂。壁が2トーンになっているのは、ここがかつて薪をくべる場所だった名残
卓也さんは銭湯が町から姿を消しつつあることを寂しく思い、「銭湯文化を残したい」と、当時85歳だった元オーナーから黄金湯を譲り受けました。当初、部分的に改修を行って、再オープンさせる予定だったそうですが、配管のつまりなどの改善点が浮き彫りになり、大規模な改修に踏み切りました。
お風呂のお湯は熱め、ぬるめ、水風呂と豊富。幅広い年代の方がゆったりとお風呂を楽しめます
ご近所さんがつないでくれたクリエイター陣!?
古き良き設備とモダンなデザイン、銭湯の今昔がつまった浴室
『黄金湯』リニューアルのディレクションを担当したのがアーティストの高橋理子さんと新保さん夫婦は、以前から家族ぐるみの付き合いをしていた友人関係。「黄金湯のリニューアルを考えている」と伝えたところ、「一緒にやってみよう!」ということになり、プロジェクトがスタート。
高橋さんの紹介で建築家の長坂常さんに話が持ちかけられ、ほしよりこさんへと縁がつながっていきました。
「長坂さんも『いずれ銭湯を手掛けてみたい』と考えていたこともあり、快く引き受けていただきました。私たちからは、お湯やサウナなどのこだわりとともに、『“コミュニケーションの場”という銭湯の本質は残したい』と伝え、全体的なデザインや設計についてはお任せしました」。
ほしよりこさんによる絵は、黄金湯を通じて人が成長していく姿が描かれています
DJブースにクラフトビールが楽しめる新感覚銭湯
熱った体を潤してくれるオリジナルクラフトビール!
「銭湯を未来に残すためには、どういうコンセプトにしたら良いか」という話し合いから生まれたのが、現在の「新しい銭湯の形」。エントランスのカウンターでは、黄金湯オリジナルのクラフトビールが提供され、ブルーボトルコーヒーのコールドブリュー缶も販売。「お風呂上がりのフルーツ牛乳」以外の楽しみ方を提案してくれます。
さらにリニューアル前の『黄金湯』から譲り受けたターンテーブルからは懐かしい音楽が流れ、「この曲、懐かしいね」「今時レコードなんて珍しいね」と、お客さんから会話が生まれるきっかけに。
ターンテーブルは世代を超えたコミュニケーションツール!取材時は荒井由美の名曲が流れていました
「お客さんからは『銭湯っていいね』『オシャレで銭湯じゃないみたい』という声をいただいています。お風呂の温度もサウナも、すべて私たちが『いいな』と思うこだわりが盛り込まれています。サウナ、クラフトビール、コーヒー、音楽。お風呂以外にもさまざまな楽しみ方があるので、それぞれのお気に入りを見つけてもらえたら嬉しいです」
来春には2階部分に宿泊施設もオープン予定とのこと。地域と人を結ぶコミュニティスペースとして、また、新しい銭湯文化の発信地として、今後の『黄金湯』に期待が高まります。
- ■施設情報
- 黄金湯
- 住所:東京都墨田区太平4丁目14−6 金澤マンション 1F
- 営業時間:平日・祝日/10:00〜24:30、土曜日/15:00〜24:30
- 定休日:第二・第四月曜日
- ※水曜のみ男女入れ替え日
- 入湯料:大人470円、中学生370円、小学生180円、幼児80円
- サウナ料金:平日/女性300円、男性500円、土日/女性350円、男性550円
- 公式HP
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