PARISmagが今、気になる方に会いに行き、「小さなしあわせ」のヒントを教えてもらうインタビュー企画。今回のゲストは1月20日新潟先行ロードショーを皮切りに、1月27日から有楽町スバル座ほか全国で公開予定の映画『ミッドナイト・バス』に出演する小西真奈美さんです。
映画は、一度バラバラになった家族がそれぞれのターニングポイントを迎え、悩みながらも前を向いて再出発していく姿を描いた物語。小西さんに映画のこと、最近挑戦している音楽活動のこと、日々の小さなしあわせについてお話を伺ってきました。
小西真奈美(こにしまなみ)
1978年生まれ。98年、つかこうへい作品・舞台「寝盗られ宗介」でデビュー。以後、映画、舞台、TVドラマなどで活躍。02年、映画『阿弥陀堂だより』でブルーリボン賞新人賞、日本アカデミー賞新人俳優賞など、09年『のんちゃんのり弁』で毎日映画コンクール女優主演賞、ヨコハマ映画祭主演女優賞など多数受賞。近年の主な映画出演作は、15年『振り子』、17年『トマトのしずく』など。17年9月、初めて全曲作詞・作曲を手掛けたオリジナルアルバム「I miss you」でiTunesのHIPHOPチャート1位を獲得。新たな活動の場を拡げている。
HP:http://www.konishimanami.com/
BLOG:https://lineblog.me/konishimanami/
他愛もない会話が映画のやさしい空気感を生み出した
−映画『ミッドナイト・バス』では、主人公の恋人・志穂というキーパーソンとして出演されていますね。撮影は昨年3月に新潟で行ったと聞きましたが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
小西真奈美さん(以下、敬称略):撮影現場はとっても和やかでした。私は原田泰造さん演じる主人公・高宮利一と10年間一緒にいる恋人・志穂を演じました。10年一緒にいるって結構長い年月ですよね。その空気感はセリフでは表現しえないふとした仕草や瞬間に表れるはずと思っていました。だから撮影が始まったら、映画の2人に近づけるよう泰造さんとなるべく一緒にいて、色んなお話をしようと思っていて。
でも、泰造さんってすごく優しくてお話もいっぱいしてくださる方なんです。だから途中からは私が特に意識しなくてもずっと一緒にいて他愛もないおしゃべりをしていましたね。撮影前の和気あいあいとした雰囲気のままスッと本番に入ることができて良かったと思っています。
−小西真奈美さんと原田泰造さんとのおしゃべりの内容、気になります(笑)
小西:ふふふ。本当に他愛もない話なんですよ。たとえば撮影中は、役者もスタッフもみんな新潟のホテルで生活しているので、1日の生活リズムが似てくるんですね。だから「昨日何時に寝たの〜?何食べたの〜?」みたいな話をしたり。
あとは好きな本や映画の話で盛り上がりました。映画『ラ・ラ・ランド』を観て、あの役者さんが最高だったよね!という話とか…。すみません、本当に他愛もないですね(笑)。泰造さんと芝居論とか語ったことないかもしれません(笑)。
人生を一歩前に進めるきっかけになる映画
−2人の関係性が映画と同じとお聞きしてほっこりします。映画では白鳥の郷や雪景色など、新潟の美しい風景が印象的でした。
小西:新潟の自然は圧倒的に美しかったですね。特に白鳥のシーンが心に残っています。はじめて野生の白鳥を見たので、その美しさと数に驚きました。ただ、実はリハーサルをして「さあ、今から撮影するぞ〜!」というタイミングで、パタパタ〜って川にいた白鳥が空に飛び立っていってしまったんですよ。
−なんと!それは慌てますね。
小西:一旦、白鳥シーンは諦めて別のシーンを撮っていたら白鳥が川に戻ってきてくれて。無事に撮影できてホッとしました(笑)そういった「THE自然」を感じられたのが圧巻だったし、新鮮でしたね。
あとは、撮影場所や支度場所として地元の方のお家を使わせてもらうことがあって、新潟の皆さんとふれあえたのもうれしかったです。皆さんすごく優しくて。新潟名物の笹だんごやのっぺ汁を差し入れしてくださったり「今日は寒いでしょう?」と言って甘酒を作って持ってきてくださったりして。
−寒い中、飲む甘酒は最高でしょうね。
小西:「ああ、あのお母さんが作ってくれたんだ」という愛情を感じられておいしさ倍増でした。「あったかいし、うれしいし、おいしいね!」みたいな気持ちになれて、しあわせでしたね。
-『ミッドナイト・バス』は1月20日から新潟で、1月27日からは全国で上映開始します。たくさんの方にご覧いただけると良いですね。
小西:はい。特に、今新潟に住んでいる方はもちろん、進学や就職、結婚などで一度新潟を離れた方にも見てもらいたいです。自分が住んでいる土地って中にいると良さが分かりづらいですよね。でもこの映画は新潟の豊かな自然や美しい景色を背景に、物語が進んでいきます。映画を見て「新潟って良い所だな」と故郷に思いを馳せてもらえるとうれしいです。
あと、映画は「家族の再生」がひとつのテーマになっていて、傷ついた大人たちが一歩踏み出す様子を丁寧に描いています。もしPARISmag読者の皆さんの中で、仕事や恋愛で一歩踏み出す勇気を持てなかったり「もう年だし…」と何かを諦めていたりする方がいるとしたら、映画を観ることで自分の人生を一歩前に進めるきっかけになれば良いなと思います。
知らないことは怖くない。あれこれ考えずまずはやってみる
−自分の人生を前に進めるってとても素敵な言葉ですね。個人的に私が今回小西さんにお話を伺いたかったのは、昨年9月に始めた音楽活動についてです。年齢を重ねる中で一歩踏み出したというのは小西さんご自身も同じだと感じました。
小西:本当にそうですよね〜!
—音楽活動を始めたきっかけを教えてもらえますか?
小西:2016年に『KREVAの新しい音楽劇「最高はひとつじゃない2016 SAKURA」』に出演したことがきっかけです。音楽劇ということもあって私以外の出演者は歌手、ミュージカルなど音楽を仕事にしている方ばかりで、きちんとうまくできるのか不安でした。
歌稽古の日に、ラッパーのMummy-Dさん、AKLOさん、KREVAさんというラップ界の錚々たるメンバーに歌を聞いてもらったんです。すると皆さんに「真奈美ちゃんのラップは声が独特なのが良い」「ラップを作った方が良い」と褒められまして。背中を押してもらってラップを作りはじめました。と言っても「韻を踏むってどうすれば良いの?」という所から始まったんですけどね(笑)。
−女優としてキャリアを積み重ねていく中で、ラップという新たなジャンルに挑戦するのは怖くなかったですか?
小西:それが知らないことだからこそ怖くなかったんです。「周りの人が勧めてくれるからやってみよう」という前向きな気持ちで。もともと私は好奇心が旺盛で「考えるよりやってみる」というタイプなんですね。
というのも何かを始める前から色々考えてしまうと「失敗するかも…」と怖いことしか思い浮かばないんです。だから「えい!作ってしまえ〜!」みたいな感じでラップを作って「えい!聞かせてしまえ〜!」みたいな感じで作ったラップを聞いてもらって(笑)。
KREVAさんにプロデュースしてもらう形で音選びやレコーディングなどをして、昨年9月オリジナル作品『I miss you』をリリースしました。
−小西さんの前向きな姿勢にすごく勇気をもらえます。
小西:何かに挑戦する時、あれこれ考えずにまずはやってみるとそんなに怖くないですよ。もちろん、あとから振り返って「ん〜。ラップはじめてみたけど大丈夫だったかな?」と少し立ち止まりはするんです。でも「やる!と宣言した以上作るしかない」と自ら背水の陣を敷いている感じです(笑)
−小西さんご自身が作詞・作曲を手がけていることにも驚きました。
小西:もともと歌手として歌うなら自分で作詞・作曲したいと思っていました。お芝居は与えられた役・セリフがあり、共演者や監督との化学反応を経て表現の幅をグッと広げていきますが、歌は基本的に1人で歌うでしょう? 誰かに与えていただく曲や詞だと自分の中で枠が決まってしまうように感じました。それなら自分の中から出てくる想いを元に作る方が、幅が広がるように感じているので、自分で歌詞も曲も作っています。あとは聞いてくださる方も私が自分で書いた方がより興味を持ってくださるかなと思って。
今年こそはヨーロッパ鉄道旅に出かける!
−2018年が始まってもうすぐ1ヶ月が経とうとしていますが、小西さんが今年やってみたいことを教えてください。
小西:芝居も音楽活動も変わらず力を入れていくつもりですが、音楽活動ではアルバムを制作する予定です。今まで以上に濃密に曲作りやレコーディングなどしていくので、それがすごく楽しみです。
プライベートだとヨーロッパに電車の旅に出かけたいです。以前、スイスに遊びに行った時に電車に乗ったら車窓も電車の雰囲気もすごく良くて感動したんです。現地に友人がいるので、パリ、ロンドン、アムステルダムなどを電車で巡りたいと思っています。毎年なかなか叶えられていないので、今年こそは実現させたいですね。
−ヨーロッパ電車の旅、とても素敵です。最後に小西さんにとっての「小さなしあわせ」を教えてください。
小西:本当に些細なことなんですけど、朝起きていい天気だとそれだけですごくしあわせになれます。どんなに寒くても朝起きたら窓をガラッと開けて空気の入れ替えをするようにしていて。そのとき、ふわっと部屋の中を通る風が気持ちよかったりするとそれだけでリフレッシュできます。また新しい1日がはじまった、今日もがんばろうって思えますね。
小西真奈美さん、お話どうもありがとうございました!
- ■映画情報
- タイトル:ミッドナイト・バス
- あらすじ:
- この夜を超えたら、きっと希望が待っている。
- バツイチ中年男の高宮利一は、新潟〜東京間を走る長距離深夜バスの運転手。東京で定食屋を営む恋人・志穂との再婚を考えていた矢先、息子の怜司が東京での仕事を辞め、帰ってくる。娘の彩菜は友人とマンガやグッズのウェブショップを立ち上げ、実現しそうな夢と結婚の間で揺れていた。
- そしてある夜、利一が運転する新潟行きのバスに、十六年前に別れた妻・美雪が乗り合わせる。十六年の長い時を経て、やるせない現実と人生の不安が、再び、利一と美雪の心を近づける。母の出現に反発する彩菜、動揺する怜司。突然の思いがけない再会をきっかけに、停まっていた家族の時間が、また動き出す──。
- 出演:原田泰造 山本未來 小西真奈美 葵わかな 七瀬公 長塚京三
- 監督:竹下昌男
- 脚本:加藤正人
- 音楽:川井郁子
- 原作:伊吹有喜『ミッドナイト・バス』(文春文庫 刊)
■一緒に読みたい記事