バターがじゅわっとしみて、甘いメープルソースのかかった、ふかふかのホットケーキ。ホットケーキ…その名前を聞くだけで、ふんわり温かい気分になりませんか?そんなおやつの定番ホットケーキをお食事系にアップデートさせたのが、経堂の『ホットケーキつるばみ舎』です。たまごのフィリングをはさんだ『ホットケーキつるばみ舎』のたまごサンドはどんなメニューなのでしょうか?さっそくお店に行ってみましょう!
文豪も愛した名店の味を後世に
小田急線の経堂駅は、商店街の活気の良さもありつつ、どこかのんびりとした雰囲気のある街。駅から徒歩2分にあるマンションの一角に、『ホットケーキつるばみ舎』はあります。マンションの正面ではなく裏手にひっそりと佇むお店は、とても静かな空間でまるで避暑地にある喫茶店のよう。
『ホットケーキつるばみ舎』というちょっと珍しい名前は、万葉集にも出てくる言葉から引用しています。“つるばみ”は古語で“どんぐり”という意味。オーナーの冬木さんは趣味で植樹を行うくらい山と植物を愛しているからこそ、この店名になったのです。
さて、『ホットケーキつるばみ舎』のシンボルといえばホットケーキです。おいしいホットケーキを作るのは、かつて神田・万世橋のたもとにあった『万惣フルーツパーラー』で修業していたマスターこと冬木透さん。文豪・池波正太郎の小説に出てくる『万惣フルーツパーラー』のホットケーキが作りたくて、同店で経験をつんだといいます。
「『万惣フルーツパーラー』は長年愛されていた老舗でしたが、東日本大震災がきっかけとなり休業しました。そこでホットケーキ発祥の店『万惣フルーツパーラー』の味を絶やしてはいけないと『ホットケーキつるばみ舎』をオープンすることにしたのです」とのこと。
『万惣フルーツパーラー』閉店の日は多くのファンがつめかけ、ニュースになっていたことを思い出します。数々の小説やエッセイに登場してきた、“万惣のホットケーキ”は経堂の地で受け継がれていたんですね。
ホットケーキはシンプルだからこそおいしい!
“万惣のホットケーキ”を基にして作られた『ホットケーキつるばみ舎』のホットケーキは、まるでお手本のようなホットケーキ。
「とにかく普通のホットケーキなんです。小麦粉も砂糖も普通のものを使っています」と言いますが、牛乳は岩手県産、卵は茨城県奥久慈産の新鮮でしっかりとしたコクを感じられるこだわりの材料を使っています。そして、なんといっても銅版で焼くので、家で作るホットケーキとはまったく異なった仕上がりです。
「ホットケーキは時間と温度の管理が重要。低い温度から徐々に上げていくと、色ムラも焼きムラもないホットケーキに仕上がります。銅版は熱伝導がよいので、均一に熱が加わるんです」と透さん。ホットケーキミックスのレシピに“熱したフライパンを濡れふきんで冷ます”という工程がありますが、色ムラと焼きムラを防ぐためのものだったのかもしれませんね。
マスターが“焼き”の作業をしているところを拝見すると、その鮮やかなコテさばきに魅了されてしまいます。まるで、絵本に登場するようなワンシーンがそのまま目の前で繰り広げられているみたいです。
甘い×しょっぱいが織りなすハーモニー
ホットケーキはもちろん、『ホットケーキつるばみ舎』で注目を集めているのが「ホットケーキのたまごサンド」!
透さんが焼くホットケーキに、麻依子さんが作るたまごのフィリングをサンド。粗めに刻んだゆで卵をたっぷりのマヨネーズと塩コショウで和えていて、たまごのコクをしっかりと感じられます。甘めのホットケーキと塩気のあるたまごが合わさると、今まで味わったことのない“甘しょっぱい”体験ができます。
このたまごサンド、ある偶然から誕生したメニュー。お店のスタッフが家にホットケーキを持ち帰ったところ、お母さんが朝食にタマゴサラダと一緒に出してくれたのだそう。一緒に食べてみると、それがものすごくおいしい! そこからヒントを得てレシピを開発したのです。しかし、登場当時は全然オーダーが入らなかったんだとか。
「最初はホットケーキのトッピングとして出したんですね。ところが全然出なくて…(笑)。そこで考えたのが、サンドして新メニューとして提供すること。2枚のホットケーキでたまごをはさんだりもしたのですが、しっくりこなかったので、1枚のホットケーキの真ん中に切り込みを入れてピタパンのようにしました」。
はさむのではなく詰め込むことで、たっぷりと入ったたまごもこぼれず、最後までおいしくいただけます。このたまごサンドにぴったりなのが、『ホットケーキつるばみ舎』オリジナルブレンドのドリップコーヒー。同じ経堂にあるコーヒーショップ『焙煎香房セレクト』で、ホットケーキに合うようにブレンドしたコーヒーは、ほどよい酸味がほんのり甘いホットケーキとマッチします。
また、季節のメニューにも注目。訪れたときは、栃木産のとちおとめを使ったジュースがメニューにありました。ひとくち口に含むと、いちごをそのまま食べているみたいにジューシー!旬の果物を使ったジュースやホットケーキは、どれもフレッシュで果物の酸味、甘み、香りが楽しめます。季節ごとに旬の果物に出会えるので、ぜひ味わっていただきたいです。
ふんわりとして、ほんのり甘いホットケーキは、ノスタルジーを感じるおやつ。そこにたまごが加わると、また違った表情を見せてくれました。ブランチにもオススメの『ホットケーキつるばみ舎』のたまごサンド、ぜひお試しください!
- ■お店情報
- ホットケーキつるばみ舎
- 住所:東京都世田谷区宮坂3-9-4
- TEL:03-6413-1487
- 営業時間:[平日]11:00〜19:00(LO 18:30)、[土日祝]11:00〜18:00(LO 17:30)
- 定休日:水曜日、第2・4火曜日
- ※土日祝限定のモーニングは9:00〜売り切れ次第終了
※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。
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