これまでさまざまなサンドイッチのお店を訪れてきましたが、今回ご紹介するのはパン屋さんでもカフェでもなく、お肉屋さんのサンドイッチ。
渋谷駅から東急田園都市線に乗り、用賀駅で下車。歩くこと10分少々の住宅地にある和牛専門の精肉店『TOKYO COWBOY(トーキョーカウボーイ)』です。
オーナーの上野さんにお店のこと、お肉のこと、そしてサンドイッチについてお話を伺いました。
お客さんと喜びを共有したい
店内に1歩足を踏み込むと、そこはギャラリーのような空間。ひとつひとつが主役と言わんばかりにスポットライトが当てられたお肉は舞台で輝く演者のようです。
もともと外資の証券会社に勤めていたという上野さん。時代の流れや日本の金融市場の低迷、そして自分でもまだいろんなことに挑戦したいという気持ちのなかで葛藤していたのだそう。
「自分で何かをやるなら『お客さんと喜びを共有したい』という思いがまずありました。あと、金融とは違って『目に見えるものを扱いたい』ということ、長年海外で生活をしていたため『海外でも展開できる』ということ。それら3つをつなぐものは何だろうと考えて4、5年試行錯誤しましたね」と上野さん。
最終的にその3つを結んでくれたのが和牛だったのだそう。
『トーキョーカウボーイ』が扱うお肉は、すべて黒毛和牛。そのなかでも飼育期間が長い牛を中心に、未経産の雌牛にこだわって仕入れています。
「雌と雄だと、肉質や味などが全然違うんです。雌牛だとサシが入っているお肉でもさっぱり食べられますし、食感もきめ細かくて繊細な味を楽しむことができますよ」と教えてくれました。
店内にディスプレイされているお肉は約40種類。部位は同じでも産地が異なるため、違った味わいが楽しめるのだそう。また、店内に並ぶお肉には、ブランド名は一切なく部位と金額のみが記されています。
「ブランド牛のように有名ではないけれど、すごくこだわっておいしいお肉を作っている生産者さんってたくさんいるんですよ。だから私たちがそのお肉を知るきっかけになれたらいいなと思っています。だからこそ、『トーキョーカウボーイ』で買うお肉は間違いないねと言ってもらえるよう、厳選に厳選を重ねた牛たちが並んでいます」と上野さん。
たしかに、お肉屋さんへ行くとブランド名に惹かれて購入することも多いのかもしれません。ブランドとは関係なく良質なお肉に出会えるということで、日本各地から肉好きが集うのだそう。
お肉のフルオーダーカットにミートキープ!?
『トーキョーカウボーイ』に並ぶお肉は、カットされていないブロック肉。一体どうやって買うことができるのが気になるところですが、『トーキョーカウボーイ』は、注文を受けてからカットする「フルオーダーカット」がコンセプトのお肉屋さん。常駐するミートコンシェルジュに「今日はこんな料理が作りたいんだけど、どの部位がいい?」「誕生日だから家族みんなでステーキを食べようと思うんだけど、どのお肉がいい?」など相談してお肉を決めることができます。
お肉の種類が決まったら、目の前でブロック肉からカットしてくれます。「もう少し厚めに…」と細かくオーダーできるのも「フルオーダーカット」だからこそ。
さらにもう1つおもしろいのが「ミートキープ」というシステム。大きなブロックのままでもお肉を購入することができるのだとか!来店した際は食べたい分だけ持って帰り、残りはお店の冷蔵庫で最適な環境のもと保管してくれるサービスです。
「入荷したばかりのお肉と、1週間2週間経ったときのタイミングでは味も変わってくるんですよ。賞味期限としては大体1ヶ月あるので、週ごとにお肉の変化を楽しんでいただけるのもミートキープの1つの特徴ですね」と上野さんが教えてくれました。
また、キープしたお肉や購入したお肉はギフトとして贈ることもできます。「おいしかったから500g親戚に送ってほしい」「お中元用にキープからスライスして何軒かに送ってほしい」など、いろいろなシーンで活用されているとのこと。ギフトの箱もおしゃれ。まさかこの中にお肉が入っているとは思わないので、受け取った方もきっとびっくりするはず!
お店には登録カードもあり、登録すると購入履歴を管理してくれます。以前購入し食べたものを把握してくれているので、「前回よりもう少しさっぱりしたものを」「この前食べたお肉がおいしかった」というように、一緒に好みを見つけていく、追求していくことができるのです。
5時間かけて作り上げるローストビーフのサンドイッチ
お肉の新しい楽しみ方を体験できる『トーキョーカウボーイ』ですが、実はお店の定番商品でもあるローストビーフを贅沢に使ったサンドイッチがあるのです。どうしてお肉屋さんでサンドイッチを作っているのでしょう?
「私たちのお店で取り扱うお肉をもっと気軽に食べていただきたいと思い、サンドイッチを始めました。最初に近隣の方々から高級お肉屋さんというイメージがあったみたいなんです。そこでまず気軽に食べられるサンドイッチでうちのお肉を食べていただいて、そこからいろんなお肉があることを知ってもらえたらと思ったんです」と上野さん。
ローストビーフの部位はその時によって変わります。基本的には赤身・サシが入ったもの・その2つの中間の3種類があり、サンドイッチは赤身か中間の部位で作ることが多いのだそうです。
お店で調理しているローストビーフは、低温調理を採用。さらに3段階くらいに温度を分けて作っているため、ローストビーフが完成するまでに5時間もかかります。
サンドイッチも、注文してから作ってくれます。
バルミューダのトースターでこんがり焼いたパン。そのパンにサンドするローストビーフはなんと80gほど!
サンドイッチのパンは『BREAD&BUTTER FACTORY』という天然酵母のパンで有名なパン屋さんに特注でお願いして作ってもらっています。パンそのものもおいしさを活かしつつ、あまりお肉の味を邪魔せず、でも食べた満足感が出るようなしっかりとした食感のパンにしているのだそう。
そして、ローストビーフに合わせるのは、なんと大葉!
「これも、実はかなり試行錯誤しました。USビーフでサンドイッチを作ったときは、クレソンやルッコラが肉の臭みを消してくれるので相性がよかったのですが、和牛のローストビーフで作ると、その野菜が和牛の繊細さを消しちゃうんですよね。
そこで、何かないかなと、大葉で作ってみたら『これだね!』と二宮と2人で即一致でしたね」とうれしそうに話す上野さん。
ソースも醤油ベースで、わさび醤油にちょっとハチミツを入れるなど、日本人に合う、和牛に合う食材を選んだのだそうです。
断面を見てもわかるように、ローストビーフがぎっしりと入っています。お肉は、とろけるようにやわらかな食感なのに、すっきりした脂でしつこくありません。パンはしっかりとした食感、でも歯切れがよくお肉と一緒に食べた時の一体感がたまりません。噛みしめたときに香る大葉がまた絶妙で、すかさずもう1口を誘います。
最近はこのサンドイッチを求めて、遠方のお客さんも増えてきたと言います。
「千葉や富山からのお客さんや、お店のInstagramを見て『どうしてもこのサンドイッチが食べたくてきました!』とハワイから来てくださったり。観光客の方にも、わざわざここ用賀のお店まで足を運んでいただいてうれしいですね」と上野さん。
とはいえ、『トーキョーカウボーイ』はあくまでもお肉屋さん。サンドイッチはパンが無くなり次第終了なので、予約をすることをおすすめします。
お肉のことに詳しくなくても、まずは気軽にサンドイッチから味わってみてはいかがでしょうか?気がつけばあなたもお肉の魅力にはまっていくはずです。『トーキョーカウボーイ』で知るお肉、まだ知らないお肉の魅力を発見しに、ぜひ足を運んでみてください。
- ■お店情報
- TOKYO COWBOY(トーキョーカウボーイ)
- 住所:東京都世田谷区上用賀1-10-16
- TEL:03-6805-6933
- 営業時間:10:00〜18:00 ※ローストビーフサンドイッチはパンが無くなり次第終了
- 定休日:水曜日
※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。
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