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    たゆたえども沈まず。パリ・ノートルダム大聖堂火災から4ヶ月

    2019年4月15日。パリの「ノートルダム大聖堂」で火災が発生いたしました。1225年に完成してから800年近くパリのシンボルのひとつとして存在してきた「ノートルダム大聖堂」の火災は、フランス国民だけでなく、世界中がショックと悲しみを感じるショッキングなニュースとなりました。

     

    ノートルダム大聖堂の火災から4ヶ月

    あれから4ヶ月。

    しばらくは、周囲が封鎖され近づくこともできませんでしたが、5月頃からは封鎖も解除され、周辺の商店も営業を再開。

    広場前は工事用の冊が設置されているものの、一般の方でも正面から眺められるようになりました。道路事情も改善され、シテ島の通り抜けもできるようになっています。

    安全確保のための基礎強化や燃え落ちた屋根の撤去作業などの復旧作業も進み、6月15日には、火災後初めて「ノートルダム大聖堂」でミサが行なわれました。参列者はヘルメット着用だったのだとか。まだまだ一般の方が内部に入ったり、近くで見たりするのは難しい状況ですが、周囲は少しずつ日常を取り戻してきています。

    「ノートルダム大聖堂」の代名詞、美しい薔薇窓のステンドグラス。火災当時の映像では、薔薇窓まで火が迫っているものもあり、心配されていましたが、大破は逃れたそうで、ほっとひと安心。

    当時、特別に許可をとり撮影したノートルダムの鐘

    映画などでも知られている「ノートルダムの鐘」です。鐘がある手前の塔は、火事の被害を受けずに済みました。

     

    フランス人にとってのノートルダム

    フランス人、パリに暮らす人々にとって、とても重要な存在だった「ノートルダム大聖堂」。パリに長年暮らしているPARISmagのライターとのまりこさんと、井田純代さんに、「ノートルダム大聖堂」での想い出を伺ってみました。

    ■とのまりこさん

    初めて訪れたのは大学の卒業旅行のときでした。最初に見たときの感動は今でも覚えています。ディズニー映画『ノートルダムの鐘』を思い出し、「この広場であのお祭りをしていたのか」「このステンドグラスを見上げながら歌っていたのか」と想像を膨らませたものです。

    そのときは、まさか数年後住むことになるなんて想像もしていませんでしたが、パリに住むようになってからは、アパートからも徒歩で行ける場所にあったこともあり、とても身近な存在となりました。パリには街中に大小さまざまな教会が数え切れないほどありますが、「ノートルダム大聖堂」は観光客なら訪れない人はいない定番スポット。日本から友人が来るたびに一緒に訪れていました。

    そして、パリ在住者全員にとっておそらく特別な場所である理由がもうひとつ。ノートルダム大聖堂の目の前に建つパリ警視庁が、毎年ビザの更新(この更新が今後もパリに滞在できるかの決め手になるため、全員にとって運命が決まるドキドキの行事。運悪く意地悪な担当者に当たったりして苦労することも多い)のために訪れなくてはいけない場所なんです(笑)。

    無事にビザの更新ができた帰り道に「ノートルダム大聖堂」を見上げると、また新たな1年を祝ってくれるような気がしてキラキラ輝いて見えたりしたものです。

     

    ■井田 純代さん

    火事の前に工事のために設置されていた足場の内側が真っ黒に焦げているのが見えます。

    ノートルダム大聖堂が燃えているという報道が流れたあと、宗派に関係なく多くの人たちが涙を流していました。「いつの日も変わらずここに在るものが、崩れ去るのを見るのは辛い」と嘆き悲しんでいました。

    2014年7月のノートルダム大聖堂

    「ノートルダム(Notre-Dame)」は「我々の母(聖母)」を意味します。宗教心のあるなしに関わらず、心のどこかで重要な存在だったということを、この火事で改めて感じさせられました。

    古くからある建築物を大切にする心があるフランス人。みんなで守ってきた過去の叡智の中核のような存在だった「ノートルダム大聖堂」の火災は、火災という事実以上にショッキングなできごとでした。

    パリに住んで、いろいろな表情のパリを見てきましたが、その中でも一番のお気に入りの場所がやっぱり「ノートルダム大聖堂」の塔からの眺めです。ここに登らないと見えない特別なパリが広がっています。

    狭く急な螺旋階段を登っていくと、そこに広がるスペシャルな空間。

    一番好きだった夕刻のパリ。ピンク色に空が染まるパリの町並みが最高。再建し、またこの風景を見られるようになるのを願うばかりです。

     

    世界中から集まる再建への願い

    それぞれの想い出の中にある「ノートルダム大聖堂」。火災直後から、世界中に再建への願いが広がりました。

    日本からも多くの募金が集まり、先日、フランス観光大使のくまモンがフランス大使館へ募金を贈呈されました。

    パリ市は、火災直後から再建を宣言。尖塔のデザインは現在、公募で募集中しているのだそう。美しい以前の姿を取り戻すのか、革新的なデザインになるのか、その行方が注目されています。

    火災直後のサッカー、パリ・サンジェルマンの試合で掲げられた「Fluctuat nec mergitur」の幕

    パリ市にはラテン語で「Fluctuat nec mergitur」 (仏語:Il tangue mais ne coule pas/たゆたえども沈まず)という標語があります。揺らぐこともあるけれど、沈みはしない。今回の「ノートルダム大聖堂」の火災の際、パリ中、世界中で見かけた言葉です。

    ショッキングなできごとに出遭おうとも、沈まず、前を向くフランスに人々の姿が印象的でした。

    パリ、フランス、そして、世界中が愛してやまない「ノートルダム大聖堂」。その再建への道をPARISmagでも見守っていきたいと思います。

     

     

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