子どもの成長や、デートの甘酸っぱい記憶…。誰しも一着はある、思い出の詰まった服。ひょんなことから汚してしまったり、サイズアウトしてしまうなど、タンスの肥やしにしてはいませんか?
そんな衣類を新しいプロダクトに生まれ変わらせる、つまり“リプロダクト”してくれるサービスが『LOOP CARE』。アルバムや日傘といった新しい姿に生まれ変わったアイテムは、とってもおしゃれで唯一無二。大切な一着を受け継ぎ、さらに大切にしたくなるリプロダクトの魅力について、『LOOP CARE』の運営を手掛ける株式会社リシュラの代表・浜口緑さんにお話を伺いました。
タンスの肥やしになった衣類は「もったいない」
浜口 緑さん(以下、敬称略):『LOOP CARE』の母体である『リシュラ』は、1993年に子ども服専門の古着店としてスタートしました。弊社は古着店の時代から、女性の多い職場。私自身もそうでしたが、日々子育てをしていると「この子ども服、捨てるのはもったいないな…」と思うことがすごく多かったんです。子どもの成長はとても早く、すぐに着られなくなってしまいます。
子どもの古着は汚れや破れ、食べこぼしのシミが付いてしまうのが特徴。古着としてリサイクルしようにも、救えない衣類が多くありました。そこに心苦しさを感じ、新しいリサイクルの形を模索した結果、考えついたのが『LOOP CARE』です。大切な衣類をまた別の新しいプロダクトに生まれ変わらせれば、捨てずに済むばかりか、これからも一緒に思い出をつくっていけます。
― 捨てずに済むばかりか、これからも一緒に思い出をつくれる。古いものを長く受け継いでいく、フランスの精神にも通じますね。
浜口:実は『リシュラ』という社名は、南フランスの小さな村に由来しているんです。パリからアヴィニョンを経由して、そこから車で1時間ほど走った場所にある、リール・シュル・ラ・ソルグという村。お店の名前を考えている時に雑誌の小さな記事が目に飛び込んできました。とても小さな村なのに、毎週末の蚤の市には大にぎわい。規模は小さくとも多くの人に喜ばれる、この村のような取り組みをしたい。そうした想いを込めましたが、ちょっと長すぎるので、私たちなりに短縮したのが『リシュラ』という社名です(笑)。
このシミにこそ、大切な思い出が染み付いている
― 『LOOP CARE』には現在、リプロダクトで製作できる6つのアイテムがラインナップされています。どのような工程を経て、新しいプロダクトに生まれ変わるのでしょう?
浜口:リプロダクトといっても、大切にしてきた衣類がどう生まれ変わるのか、なかなか想像しづらいですよね。生まれ変わった姿を明確にイメージしていただくために、具体的な製品を提示しています。アルバムや日傘、ドッグウエアといったアイテムをラインナップしていますが、なぜこの6種類かというと、できる限りどんな衣類からでもリプロダクト可能な再現性の高さ。もうひとつ、長く使いたくなるアイテムかどうかも重要です。
― どの部分をリプロダクトに使用するのか。そこがポイントになりそうです。
浜口:そうなんです。汚れもほつれもない、きれいな部分を使用したリプロダクトも素敵ですが、あえて「シミの部分を使って」というご要望もあるんですよ。そのシミにこそ、持ち主の方の思い出が染み付いているのでしょう。「二人の思い出を形にしたいから、私と夫の洋服、二つの生地を掛け合わせて」というリクエストもあります。こうしたご要望は大歓迎ですし、私たちスタッフも手元に届いたお洋服をじっくり眺めながら、そこに込められた思い出を想像し、リプロダクトの作業を進めていきます。
― 衣類に染み付いた思い出が新しいプロダクトになり、つながっていく。まさに『LOOP CARE』ですね。
浜口:お客様のお声を伺うと、どの衣類をリプロダクトしようかと考える段階から、このサービスを楽しまれているんです。タンスから久しぶりにお洋服を取り出すと、そこにまつわる思い出が、どんどんよみがえってくるんですね。ご家族一緒に「こんなときに着たね」「この汚れは、あのときに付いたものだね」なんて盛り上がるのと同時に、どのお洋服をリプロダクトに出そうか、迷う方も少なくないようです。
思い出の詰まった衣類が迷うくらいにたくさんあるって、すごく豊かなこと。しかもオーダーとして多いのが、形見を用いたリプロダクトなんです。自分の思い出ではなく、亡くなられた方の思い出が詰まった衣類を仕立て直し、受け継いでいきたい。『LOOP CARE』のサイトでは、お客様のリプロダクトの背景をお届けする「ループ ストーリー」という連載をしていますが、仕上がったアイテムをぎゅっと抱きしめる方もいるほどです。
断捨離の時間を、記憶との語らいのひとときに
― ステイホームの時間が増え、お洋服の断捨離をする人も少なくない昨今。今後、さらに『LOOP CARE』に注目が集まる予感がします。
浜口:断捨離をするにも、タンスから取り出した衣類に触れながら、皆さんが自然と、思い出を巡らせるはずなんです。そうしたときには、ぜひともじっくり、思い出と向き合っていただけたらと思います。「この子との出会いは何だったろう?」と、衣類を擬人化させるような感覚ですね。すると捨ててしまうことが、どこか惜しくなります。
捨てることを惜しむ気持ちはゴミの削減にもつながりますし、そこでリプロダクトという方法を選んでいただければ、どのお洋服をリプロダクトに出そうかと盛り上がるのはもちろん、仕上がったアイテムからも会話が生まれ、また新しく思い出を紡いでいけます。『LOOP CARE』というサービスは、お客様の思い出づくりのお手伝い。私たちの手伝いにより、少しでも皆さんの笑顔につなげられたら幸いです。
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