小田急線線路の地下化、そして駅の大規模リニューアルにより街の様子が一変した下北沢駅周辺。駅のリニューアルに伴い、新しい施設も続々とオープンしています。
今回ご紹介する『BONUS TRACK(ボーナス トラック)』もそのひとつ。線路の地下化によって使用可能になった、下北沢駅と世田谷代田駅のちょうど真ん中“線路上”に誕生した複合施設です。
ローカル・ソーシャル・カルチャーを3本柱に、下北沢らしい個性豊かな13店舗が軒を連ねます。今回はその中から5店舗をご紹介。どのお店も、“店主の顔が見える”魅力的なお店ばかりですよ!
本を読むために整えられた空間『fuzkue』
植物が茂る『BONUS TRACK』のなかでも、ちょっぴり鬱蒼とした木々の奥にひっそりと佇んでいるのが『fuzkue(フヅクエ)』。“本の読めるお店”をコンセプトに初台で誕生したお店ですが、『BONUS TRACK』に2店舗目がオープンしました。
店主の阿久津隆さんは無類の読書好き。読書好きが高じて『本の読める場所を求めて』(朝日出版社)、『読書の日記』(NUMABOOKS)といった書籍も出版されています。
「本を読むことは大好きだけど、いざ読書をしようとするとぴったりな場所がなかなかないんですよね」と語る阿久津さんは、読書に没頭できる場所を作ろうと思い『fuzkue』をスタートさせました。
店内を見回すと、本がぎっしり!これは全て阿久津さんの私物。まるで阿久津さんの書庫に迷い込んだような感覚に…。これだけでもゆっくりと読書に没頭できそうですが、他にも本を読むためのこだわりが随所にあります。
「おしゃべりやパソコン作業はご遠慮いただいています。書く作業もいくつか注意していただくことがあったり、めんどうな店です(笑)。ペン先を出すときのカチっという音、長い文章を書くときのカサカサという音も、本人以外には雑音になってしまいがちなんですよね」と阿久津さん。
心地よく読書ができる静けさを大切にした空間は、穏やかなアンビエント音楽が流れてのんびりと気兼ねなく過ごせます。「このお店は時間制限もないので、心ゆくまで読書を楽しんでほしいです」という阿久津さんの言葉を聞きながら、入口方向に目をやると木立の緑が美しく輝いていました。
長時間読書を楽しんだら、お腹も減ってきます。そんなときにオススメなのが、豊富なドリンクとフード、スイーツメニュー。12時〜24時までと営業時間が長いため、それぞれの時間帯でお好みの過ごし方ができます。ランチがてらキーマカレーをいただくもよし、手作りのスイーツでティータイムを楽しむもよし、選び抜いたウィスキー片手に文豪気分を味わうのもよし。それぞれ、じっくりと本を楽しむ方法を選べるのもうれしいですね。
「メニューにとくにこだわりはありません」と阿久津さんは言いますが、日本のクラフトビールから10年もののスコッチ、江戸時代から続く老舗酒蔵の日本製ウォッカなど、通好みのラインナップ。コーヒーは三軒茶屋の『OBSCURA COFFEE ROASTERS(オブスキュラコーヒー ロースターズ)』でオリジナルブレンドを焙煎してもらっているそうです。
「複数の人、たとえそれが知らない人でも、同じ空間で読書をする。それってちょっと共犯者めいた心強さがあるんですよね。なんだろう、映画館で映画を見ているときに同じポイントで笑っている人がいたら“おっ!”って思うような(笑)。匿名の関係のまま同じ気分になれる、そんな場所にしていきたいと思っています」と、阿久津さん。
あなたも『fzukue』で“読書の共犯者”になってみてはいかがですか?
- ◼️お店情報
- fzukue(フヅクエ)
- 住所:東京都世田谷区代田2-36-14
- 定休日:だいたい無休
- https://fuzkue.com/
- ※営業時間等に変更がある可能性がございます。詳細はお店のHPやSNSをご確認ください。
今だからこそ、つけたい。日記の専門店『日記屋 月日』
『fzukue』の目の前にあるのが、日記の専門店『日記屋 月日(にっきや つきひ)』。
2019年にオーナーであるNUMABOOKS代表の内沼晋太郎さんが「日記の面白さを伝える拠点を作れないだろうか」と思ったのが『日記屋月日』誕生のきっかけ。店内には、『土佐日記』から『アンネの日記』、『猿岩石日記』(日本テレビ)!に至るまで、古今東西の日記が揃っています。全てオーナーとスタッフで情報交換しながら、集めているそうです。
日記にはさまざまな要素が含まれています。ベストセラー作家が内面に持っていた苦悩、気難しい大御所が気を許してしまう瞬間、人気料理家が作る日常的なおうちごはんetc…。そんな普段は目にできない部分に触れられるのも、日記の醍醐味です。また、他人の日記を通じて過去と同じ体感を味わえるのも、日記の魅力のひとつ。かつて近所で暮らしていた作家の日記から、当時の街の様子を「昔はこんな場所だったんだ」と空想するのも楽しいひと時です。
日記には1日の出来事を振り返ることで、自分自身の心を整理しクールダウンする作用があります。もし気分がノらなくて数日書けなかったとしても、それはそれで記録の一部です。さまざまなストレスを抱える(特に2020年は新型コロナウィルスの影響もありました)現代人にとって、実は癒しになるのが日記なのかもしれません。
こちらのお店では、テイクアウト限定でドリンクメニューも提供。中目黒に本店がある『カフェファソン』のスペシャリティコーヒー片手に、日記を楽しみましょう!
- ◼️お店情報
- 日記屋 月日(にっきや つきひ)
- 住所:東京都世田谷区代田2-36-12
- 電話:03−6450-7610
- 定休日: 無休
- http://tsukihi.jp/
- ※営業時間等に変更がある可能性がございます。詳細はお店のHPやSNSをご確認ください。
新感覚コロッケ&メンチカツを堪能『恋する豚研究所 コロッケカフェ』
『BONUS TRACK』の最も下北沢駅側になる大きな建物は『恋する豚研究所』。千葉の農場で育った「恋する豚」を使ったコロッケを提供するコロッケカフェです。
ちょっと変わった名前のこちらのお店、「豚に恋する」という意味ではなく「豚が恋をする」というイメージで名付けられたんだそう。
「豚も恋をすると幸せで健やかになって、そしたらおいしくなる。そんな思いで豚を育てています。衛生管理は徹底的に、豚のエサに発酵飼料を加えたこだわりのものを使用。腸内環境を整えると、臭みもなくなりさわやかな豚になるんですよ」と教えてくれたのはマネージャーの佐藤智行さん。
香取の食堂では、しゃぶしゃぶ定食や塩コショー焼き定食がいただけます。「恋する豚は臭みがないので、しょうが焼きなどしっかりとした味付けでは正直負けてしまうんですよ。なので香取の食堂では、しゃぶしゃぶや塩コショー焼きといった、シンプルなメニューを提供しています」と佐藤さん。
下北沢のお店でいただけるのは、ブランド初のコロッケ(ジャガイモ、サツマイモ)とメンチカツ。全て千葉県産の食材で作られています。
左からメンチカツ、コロッケ(サツマイモ)、コロッケ(ジャガイモ)。一般的なメンチカツは玉ねぎと香辛料がたっぷりと入っていて食べ応えがありますが、こちらのメンチカツは驚くほどさっぱり!九十九里浜産のお塩をほんの少しつけていただくと、豚本来の旨味と甘味がアップします。
ほんのり甘めの「コロッケ(サツマイモ)」は、地元で栽培されているサツマイモを使った1品。サツマイモ本来の優しい甘さと香りを楽しめます。ベーシックな「コロッケ(ジャガイモ)」は2種類のジャガイモをブレンド。しっとり感とホクホク感を同時に味わえます。揚げ油には劣化しにくい米油を使用していて、冷めてもおいしいのが特徴。テイクアウトする際は、トースターで再加熱するのがおすすめですよ。
「下北沢にお店をオープンすることが決まって、どんなメニューを作ろうかと考えたときに思いついたのがコロッケでした。街歩きが楽しいエリアなのでワンハンドで食べられるサイズに作りました。この辺は住宅街でもあるので、自宅で食べるお惣菜としても買われていく方もすごく多いです」。
先日は100個も購入したお客さんがいたのだとか!ひと口サイズとはいえ驚きですが、それほどに次々と手が伸びてしまうコロッケなんです。
店内では、『恋する豚研究所」で製造されたソーセージやベーコンといった加工食品に加え、地元千葉県の特産品も販売。こだわりのセレクトで、いつもの食卓がちょっぴり豊かになりそう。
「ここは自由に過ごしてほしい空間。ランチでもティータイムでも、のんびりと普段使いして欲しいです」と、佐藤さん。『恋する豚研究所 コロッケカフェ』で新感覚のコロッケ体験を味わってはいかがですか?
- ◼️お店情報
- 恋する豚研究所 コロッケカフェ
- 住所:東京都世田谷区代田2-36-15
- 電話:03-6804-0666
- 定休日:無休
- http://www.koisurubuta.com/
- ※営業時間等に変更がある可能性がございます。詳細はお店のHPやSNSをご確認ください。
野菜を残さず楽しめるコールドプレスジュース『Why_? 下北沢』
『BONUS TRACK』の中程にある『Why_? 下北沢(ホワイ シモキタザワ)』は6年前に「Easy &Fast」をコンセプトにスタートしたコールドプレスジュースのパイオニア的存在『Why Juice?』の姉妹店。“野菜と果物のおいしい生活”をテーマに、国内の安心・安全な食を扱うジューススタンド&グローサリーストアです。
お店に入ると目に飛び込んでくるのは、みずみずしい野菜たち!これらは全て日本全国から選りすぐった農薬不使用・減農薬・化学肥料不使用などの栽培方法で作られた野菜。毎週採れたてで届く旬の野菜は新鮮で栄養もたっぷりです。
『Why_? 下北沢』といえば、なんと言っても新鮮な野菜を使ったコールドプレスジュース!野菜の栄養素は熱で壊れやすいので、普通のジューサーでは大切な栄養素がなくなってしまいます。その栄養素を壊れにくくジュースにするのが低速回転でジュースを絞り出す“コールドプレス製法”。パルプ(果皮などの固形物)を取り除いたクリアな液体で、すっきりと飲みやすいのが特徴。胃腸への負担が少なく、消化しやすいので栄養を余すことなく摂ることができます。おいしく手軽に栄養補給ができるコールドプレスジュースは、心にも体にもうれしいまさに「Fast&Easy」なドリンクなんです。
今回は、『Why_?』の人気メニューから季節のスムージーの「サマーネクター」、コールドプレスジュースの「チャージ」と「リトルグリーン」をいただきました。
「サマーネクター」は旬の桃をたっぷり使ったスムージー。芳醇な香りの桃に、セロリとパイナップルの爽やかな香りが加わって、ネクターなのにごくごく飲めちゃいます。
オレンジ色が鮮やかな「チャージ」はにんじんをベースに、季節の柑橘とパイナップルをミックスした夏仕様の組み合わせ。爽やかなにんじんとトロピカルな甘みでお子さんにもファンが多い1番人気商品なんだとか。
「リトルグリーン」は季節の柑橘をベースに、セロリや“野菜の王様”のケールをミックスした緑色のジュース。柑橘の爽やかさと野菜の青み・甘みが口に広がり、「そのまま野菜を飲んでいるよう!」「体に効いている!」といった印象。意外と男性人気が高いジュースだとか。普段なかなか野菜が摂れない方やむくみが気になる方にぴったりのジュースです。ジュースは旬に合わせて組み合わせが変わるので、それも楽しみの1つです。
生産者さんが大切に育てた野菜や果物は捨てるところがありません。ジュースを絞った際に出るパルプは、ラップサンドのトルティーヤやキャロットケーキに変身。見た目も美しく、栄養も残さずいただくことができます。
ちなみに店内にある野菜や果物、そしてドレッシングなどは購入可能。お家でもおいしい野菜と果物を楽しむヒントがいっぱいです。ちょっとしたスーパー代わりとしても利用できる、地域密着型のジュース屋さんでした。
- ◼️お店情報
- Why_?下北沢(ホワイ下北沢)
- 住所:東京都世田谷区代田2-36-12
- 電話:03-6805-5380
- 定休日:不定休
- https://www.why-juice.me/
- ※営業時間等に変更がある可能性がございます。詳細はお店のHPやSNSをご確認ください。
日々の食事をちょっと豊かにしてくれる『発酵デパートメント』
『BONUS TRACK』の中でも大きめの店舗なのが『発酵デパートメント』。日本だけでなく世界の発酵食品をセレクトし、発酵文化を発信するための中核となるお店です。
このお店は発酵デザイナーとして活躍する小倉ヒラクさんが代表を務める発酵デザインラボ株式会社初となる実店舗。ヒラクさんは昨年、これまでに全国を旅して見つけた発酵食品や醸造家さんの声を集めた企画展を渋谷のヒカリエで開催。全国各地、多くの方達から反響があり「それなら常設店を作ろう」と、このお店をオープンしたんだとか。
店内には発酵食品、調味料、お酒から生活雑貨、書籍に至るまで所狭しと並んでいます。商品のセレクトはスタッフの方中心に行っていますが、時には発酵に詳しいお客さんから「甘酒はない?」「○○の醤油はない?」などとリクエストされ、検討することも。
オープン当初は調味料中心だった棚も、今お客さんのニーズに応えラインナップが増え、まるでお店の中も“発酵”しているみたい。現在はまだ海外への買い付けができませんが、落ち着いたら世界の発酵食品もどんどん展開していくそうです。
また、おうち時間が増えたことで、発酵に興味を持ち、ぬか床や味噌を手作りする人も増えているのだとか。ぬか床や納豆手作りキットは『発酵デパートメント』の人気商品。突き詰めすぎて辛くならない程度の、ちょっぴり丁寧な暮らしをサポートしてくれる商品は忙しい毎日を過ごす現代人にぴったりなのかもしれません。
こちらでは発酵ビギナーのための「発酵サブスク」もスタート。醤油や味噌など定番の調味料に加えて、ちょっと珍しい調味料や酢、珍味をセットにして月1でお届け。使い方がわからなくても大丈夫!初心者でも無理せず作れるレシピが人気の自炊料理家・山口祐加さんによるレシピリーフレットが同梱されます。発酵マニアの人にとってもうれしいサービスですね。
お店の半分はレストランで、そちらでは発酵食品を使用したランチ定食や組数限定のコースディナーをいただけます。ワインなどこだわりのお酒とのペアリングも楽しめますよ。ランチはテイクアウト可能なメニューもあり、自宅でゆっくり派にも◎。
とにかく多種多様な発酵食品。毎日使う常備調味料だからこそ少しこだわったものを使うだけで、食事が一層楽しくなります。わからないことはスタッフの方が丁寧に説明してくれるので、どんどん質問してみるといいですよ。今後は定期的にイベントやワークショップも開催する予定。奥深い“発酵”の世界の扉を開けてみては?
- ◼️お店情報
- 発酵デパートメント
- 住所:東京都世田谷区代田2-36-15
- 電話:03-6413-8525
- 定休日:水曜日
- https://hakko-department.com/
- ※営業時間等に変更がある可能性がございます。詳細はお店のHPやSNSをご確認ください。
「新しい商店の形」を提唱している『BONUS TRACK』。どこのお店も、近所の方や他のショップの方、いろんな人がちょっとした時間に立ち寄って声をかけ合っているシーンが印象的でした。古き良き商店街と新しいカルチャーがミックスされている新しい形の複合施設。“ちょっと贅沢”を探しに、下北沢散歩を楽しんでみては?