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    ときめく古道具との出会いがきっとある。鎌倉のアンティーク店『artique kamakura』

    鎌倉から江ノ電に揺られて2駅、路地を進むと見えてくるお屋敷がアンティークショップ『artique kamakura』。フランスを中心にアンティークを買い付けている浅野さん一家の審美眼に惹かれ、国内外からお客様が訪れています。お店のこと、心地よさの秘密、そしてあまり明かされることのないフランスでの買い付け事情について、オーナーの妹である若菜さんにお話を聞かせてもらいました。

     

    海沿いの古民家でフランスアンティークを楽しむ

    「『artique』は12年前に兄が始めました。父が画家、母が絵本作家という家庭で育ったこともあって幼い頃からアートや古道具が身近で。兄が実家の庭に小屋を建てたのをきっかけにスタートしたんです。兄と母が埼玉県東松山市の本店に、私が鎌倉店にいることが多いです」。

    創業当初からフランスで買い付けを行っている『artique』。鎌倉店にはフランス家具、ランプやカゴ、小さな薬箱などときめくアンティークが所狭しと並んでいます。

    「お店に置いているものはフランスで買い付けたものがほとんどで、あとは他のヨーロッパや日本のものが少しだけ。売れ筋を意識するというより私たち家族がいいと思ったものを置いています。その感覚に共感してくれる人に買ってもらえるとうれしくて」。

    誰かが交わした100年前の手紙。なんてロマンチック!

    もともと表参道にあった店舗を鎌倉に移したのは2018年の春。「海が好きだから、ずっと鎌倉でお店を営みたいと思っていました。だから空き情報が出たときは、どうしても借りたくて手紙を綴ってお願いしたんです」と、若菜さんが惚れ込むお屋敷はなんと大正時代に建てられたもの。

    窓を開け放つと由比ヶ浜からそよぐ風が気持ちよく、晴れた日はお庭でピクニックだってできそう。100年近く時を刻んできた空間はアンティークともよく馴染み、つい長居をしてしまう居心地の良さです。

     

    フランスでの買い付けは、意外とハードな遊牧民スタイル!?

    浅野さん一家は3〜4ヶ月に一度、フランスで買い付けを行います。「フランスで買い付けと聞くといい響きかもしれませんが、結構タフな旅なんです(笑)」と若菜さんはお茶目に笑います。

    「今年の10月は1ヶ月滞在し、プロヴァンスなど南フランスを中心に買い付けました。車移動なので通りすがりの村に立ち寄ることもあるし、車が買い付け品でいっぱいになったら、その都度フランス北部の港で荷降ろしをして再び買い付けに向かいます。結局、フランス全土を駆け巡っていましたね。

    買い付けはとにかく移動、移動、移動(笑)。フランスはアンティークが文化として根付いているので、蚤の市、オークション、倉庫など毎日どこかで買い付けができる。だから遊牧民のようにずっと移動しています。時に『フランス人も来ない町に日本人が来るなんて!』と現地の人に驚かれることもあったり(笑)」。

    「南フランスは人や木の温かみを感じるものが多くて好きです」。

    「そして時間もタイトなんです。中には夜中1時から始まる蚤の市もあって…。世界中からバイヤーが買い付けに来るので、『たくさん見たい!』となるとゆっくりホテルで眠る時間が惜しくて車中泊をすることもしばしばです」。

    旅のお供は大きなバン。
    移動と買い付けの繰り返しで睡眠2時間という日も…。

    奮闘の結果、今回も数え切れないほど多くの買い付けができたのだそう。「手配された車が全長7mもの大きなバンだったので、テーブルや椅子など大物家具をたくさん買い付けることができました」と教えて下さいました。

     

    身構えず、愛着を持って、アンティークを楽しんで

    買い付けは、目の前に広がるたくさんのものからお気に入りを見つけること。それは私たちの普段の買い物にも通じる部分がありそうです。『artique』の皆さんはどんな感覚で選ぶのでしょう?

    「好き!と思うものを選ぶだけ。ものとの出会いって作れるものじゃない。たまたま立ち寄った田舎の倉庫で掘り出し物を見つけることもあります。出会えただけでご縁だから、欲しいと思ったら必ず連れて帰ります。その時、その場所にしかないものは逃したくなくて。

    フランスのお国柄もあって、きちんとした予定は正直立てられません(笑)。だからこそ行きあたりばったりの出会いを楽しんでいます」。

    「フランスでのルーティンはステーキタルタルを食べること」と朗らかに笑う若菜さん

    『artique』の店内にはご家族それぞれが生み出す作品も置いてあります。その中でひときわ目を引いたのが真鍮のアクセサリーです。

    「『fleurgrance』というブランドで私がひとつひとつ手作りしています。コンセプトは小さなしあわせ。私の名前に菜の花の“菜”という字が入っているのですが、菜の花の花言葉が“小さなしあわせ”なんです。『fleurgrance』のアクセサリーを身につけることで、小さなしあわせがいっぱい訪れますようにという願いを込めています」。

    フランスでアクセサリーのパーツを買い集めることもあるそう。

    「真鍮は時を重ねるとアンティークのような風合いに変化するのが特徴。だからアンティーク同様、長く愛用してもらえるとうれしい」。心惹かれるものを見つける、好きなものを身につける。そんなささやかで確かなときめきを積み重ねることが、しあわせへの近道なのかもしれません。

    最後にアンティークの楽しみ方について教えてもらいました。「アンティークだからといって身構えず、好きなように楽しんでほしいです。アンティークグラスやお皿、カッティングボードがひとつあるだけで食卓の空気がガラッと変わります。用途不明なものをあえて買って、部屋に飾るのも粋ですよね。

    アンティークやお屋敷に関わるようになって、古いものって大切にされてきたから残るんだということに気づきました。何百年という時の流れの中で誰かが使ったから、今、私たちの手元にある。だから自分の感覚を大事に、愛着を持って生活に取り入れてもらうのが一番です」。

    10月に買い付けしてきた品々は年明けから順次お店に並ぶそう。ぜひ皆さん、生活の中に馴染むアンティークと小さなしあわせを『artique』で見つけてみませんか?

     

    • ■お店情報
    • artique kamakura
    • 住所:神奈川県鎌倉市長谷2-4-3
    • TEL:050-3184-3838
    • 営業時間:11:00〜18:00
    • 定休日:月・火曜日

    ※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。

     

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