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    臼田あさ美さんの日々の暮らしと小さなしあわせ

    PARISmagが気になる方々へ会いに行き、「小さなしあわせ」のヒントを教えてもらうインタビュー企画。今回は女優だけでなくモデルとしても活躍されている臼田あさ美さんです。

    脚本家、小説家として異彩を放つバカリズムさんが原作×脚本×主演を務める『架空OL日記』。その中で姉御肌のOL・小峰智子(通称・小峰様)を演じている臼田さん。銀行に務める5人の女性たちの、なんてことない日常を淡々と描いていたドラマが、なんと映画化! 2月28日の劇場公開に先立ち、映画の見どころや暮らしの中で感じる幸せを臼田さんにお聞きしました。

    臼田 あさ美(うすだ あさみ)

    1984年生まれ。千葉県出身。『色即ぜねれいしょん』『南瓜とマヨネーズ』『蜜蜂と遠雷』などの話題作に出演。『愚行録』では第39回ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞。映画だけでなく、『龍馬伝』『問題のあるレストラン』『家売るオンナ』『ママゴト』『銀と金』といったドラマでも活躍中。

     

    役のキャラクターにも再会できる幸せ

    ―『架空OL日記』映画化のお話があったときのお気持ちからお聞かせください。

    臼田さん(以下、敬称略):まず「あのなんでもない日常を描いたドラマが映画化?」と、驚きました(笑)。“映画”って私の中でちょっと特別な存在なんですけど、事件も何も起こらないこの作品が映画化するということで「えっ!どうなるの?」とドキドキしました。でも、またみんなに会える喜びがすごく大きかったです。ドラマの撮影現場がすごく楽しかったので。それは役者としてのみなさんに会えることももちろんなんですけど、それぞれのキャラクターに会える楽しみもありました。「またマキちゃんに会える〜」みたいな、そういう感覚ですね。

    ―なるほど! では役者同志でもあるけど、キャラクター同志という感じもあるんですね。

    臼田:ありますね。そこの境目が不思議となくなるくらい、空気感が出来上がっているメンバーなんです。

    ―その空気感というのは、時間をかけていくうちに出来てきたものなんですか?

    臼田:そうだと思います。ドラマ版の撮影が始まった頃は、初めて共演する方も多いですし、やっぱり緊張していたんですよ。でも撮影が進むにつれて、演じているキャラクターのままでいられるというか、それぞれがそれぞれの立ち位置にすっと入っていけるような環境が自然とできあがりました。

    ―バカリズムさんはひとり男性ですけど、みなさんの中に自然に溶け込めましたか?

    臼田:待ち時間もみんな同じ部屋でしたし、めちゃくちゃ自然体でした(笑)。制服を着ているというのもありますけど、でも男性、女性というのが意外と誰からも感じないというか…。女性陣もいい意味でサバサバした人たちだったからだと思います。

    ―バカリズムさんが撮影後、私服に着替えるとすごく違和感があったとか?

    臼田:そうなんですよ! たまーにヒゲが伸びてくることがあるんですけど、そんな時ヒゲを剃ってたりすると「あっそうだそうだ、男だった!」と、変な感じになりました(笑)。でも、そういうのも自然と慣れてきて「なんかちょっとすね毛生えてるよ」とか、女友達と指摘し合う感じで言ってたし…。男性であることを突っ込んでいたのは最初の方だけでしたね。

    ―じゃあ後半はプライベートなお友達みたいな感覚だったんですか?

    臼田:撮影後にみんなでご飯食べに行ったりしていました。撮影の合間の時間にファミレスでただお茶を飲みながら「デザートまでいっちゃう〜?」みたいなノリだったり、普通にみんなで過ごしていました。

    ―役と自分との境目がなくなっていった感じだったんですね。

    臼田:もちろん自分のセリフを覚えて現場に行って、その役を演じるということもあります。でも、この作品では周りの人たちからのリアクションだったり、撮影中の空気で“小峰様”というキャラクターを作ってもらえた気がします。だからか、「小峰様はこうだから、こうしよう」とあんまり過剰に家で準備しなくてもいいんですよ。これは多分私だけでなく、他のみんなもそうなんじゃないかな?そもそも脚本が素晴らしいというのが、大きいと思うんですけどね。

    ―脚本の素晴らしさは、どんなところで感じましたか?

    臼田:普通のドラマの脚本はストーリーを進めていく上で必要なことが書かれているから、会話として返事が抜けていたりすることもあるんです。そういうときは、アドリブで埋めていたり、なんとなく空気感で埋めていたりするんですね。でも升野さん(バカリズム)は自分でコントや舞台をやられていて、1人で何役も演じたりするので、演じる人の間とかテンションがすごく掴めるんですよ。

    そのうえで脚本を書いているから、なんかリズムとテンポがいいですし、演技する中で「このセリフをこの人が言う?」みたいな違和感がないんです。だからかテンポが早くてもセリフを覚えやすいし、違和感がないから自然とセリフが出てくるんです。もちろんエピソードとしておもしろいことを描いてくれているということは大前提です!

    ―アドリブが結構入っているように感じたのですが、実際はどうなんですか?

    臼田:多分見ている方が「ここアドリブなのかな?」と思っていたり、笑えるポイントは基本脚本です。それだけ脚本がしっかりとしているんですよ。過剰に演技をしなくても、ちゃんと笑いが起こるように出来ているんです!

     

    “小峰様”がとても別人とは言えない存在に

    ―小峰様は姉御肌のかっこいい先輩ですけど、ご自身と似ていますか?

    臼田:普段、「自分に似てるな」とか、そういう風に役を見ることは少ないんですけど、やっぱり小峰様は自分と似ているのかも。違和感なくセリフが言えたり、過剰に“小峰様”というキャラクターを作らなくても役に入れるのは、私の中に“小峰様”がいるんだと思います。自分が役に寄っていってるのか、役が自分に近づいているのかわからないですけど、“小峰様”はとても別人とは言えない存在になっていますね。

    ―演じる時に役の背景とか想像されると思うんですけど、そうことはされていますか?

    臼田:こんなこと言っていいのかわからないですけど(笑)、本当に何も準備せずに現場に行っています。例えば、バッグの中に入っている印鑑ケースや携帯など、どんな小道具も「小峰様のやつじゃん!」とわかるくらい、スタッフも含めて全員「小峰様ってこういう人だよね」という共通認識を持っているんです。だから自然と“小峰様”になれるんです。

    ―5人の役の立ち位置って、普段も同じ感じなんですか?

    臼田:みんながどう思っているかはわからないんですけど…。不思議なもので、みんなそういうところあるんですよ。マキにも夏帆ちゃんらしい部分が投影されているし、佐藤玲ちゃんは「私はこんな人じゃない!」って言うかもしれないけど「サエみたいなところあるんだよー」って。

    チャーミングな範囲でみんな持っているんですよ。(山田)真歩さんが演じる酒木さんなんて、そのままですよね(笑)。

     

    女性も男性も共感できる人間関係

    ―臼田さんの中で“OLさん”のイメージって何かありました?

    臼田:この作品を通して思ったのは、この5人の関係性は、OLとか女性だからというのは実はあまり関係ないということ。もちろん各エピソードにはOLならではのものがありますが、人との関係性だったり、誰かに対して「嫌だな」って思うポイントとか、「こういうところあるよね」って人に突っ込みたくなる部分は、どの仕事であろうが、どの年代であろうが、何か通ずるものがあるなと思います。

    その中で私が唯一想像できなかったのが「月曜日が憂鬱だ」ということくらいでしょうか。それから、決まった時間に会社に行く感覚は自分にはない部分だと思いました。OLさんてこんなに毎日メイクして、満員電車に乗って、なんかリスペクトな気持ちが生まれました。

    ―大変だけど愛おしさもありますよね。日々のちょっとしたマキちゃんとおしゃべりする時間とか、「すごく幸せなんだろうな」と感じました。

    臼田:食べ物に本当に重きを置いているところとかいいですよね(笑)。「少しでもおいしいものを食べたい!」みたいな貪欲さはすごくチャーミングだなって思いますよね。その感覚は私たちも一緒。「今日のロケ弁なんだろうね〜」って、それがおいしかったら「よっしゃー!」と喜んじゃうところは同じですね(笑)。

    ―以前ドラマ版のインタビューで「見どころがないところが見どころ」とおっしゃっていました。映画版の見どころはどこですか?

    臼田:映画版も本当見どころがないんですよ…。普段映画に馴染みがない人からすると“映画館に行く”って結構ハードルが高いじゃないですか。そういう方には「かしこまって行かなくていいから、空いている時間に見てください」と伝えたいですね。

    作品の内容的に「これを見に来い!」「これを見てくれ!」みたいな思いは皆無です(笑)。ただ「一緒の時間を過ごしましょう!」という感じですね。

    ―きっぱり宣言しましたね(笑)。今回の映画の中で好きなシーンを教えてください。

    臼田:やっぱりこの5人が集まっているところは最強ですね。なんか本当にどうでもいいことですごく楽しんでいるから、好きなシーンというのも本当になくて…。

    ―好きなシーンがない(笑)。

    臼田:いい意味でない(笑)。でも、映画ならではのシーンとしては、地元の友達が出てきたり、海外採用のシム・ウンギョンちゃんが出てきます。でも普通に馴染んじゃっているんですよ。素晴らしいほどに、この作品の世界にいるんですよね。

    ―そこで大事件が起こるわけじゃないですもんね(笑)。

    臼田:そう、何も起こしてくれません。でもそこがすごく好きです。

     

    みさと銀行の更衣室はノスタルジーな空間

    ―ご自身の日常の中で、こういう女同士でほっこりしたりする時間はありますか?

    臼田:高校が女子校だったので、作品で描かれている雰囲気はすごく懐かしかったです。多分升野さんが男っぽさを出していたら、制服でルーズな座り方したりとか、足でロッカー閉めたりとか、しないと思うんですよ。でも実際、女子更衣室ってこうですよね(笑)。女子校時代に見ていた景色にすごく近いと感じました。

    でもそれって全然悪いことじゃなくて、湿っぽさのない本当にささやかな女だけの幸せな空間なんですよ。制服姿でスカートなのに足がちょっと開いてるとか、「肩疲れたー」って肩もみするとか、すごくリアルが描かれていると思います。

    ―では、臼田さんご自身は日々、リフレッシュや気分転換はどうしていますか?

    臼田:2018年に出産してから、もう日常がガラッと変わって。今までは自分のペースで休みたいときは休んでいたし、働く前も「がんばるぞー!」と気合を入れる時間も作れていたんですけど、今は自分の思い通りにいく時間なんてほぼありません。

    なので、リフレッシュ方法もこれといってないんですけど、育児と仕事を両方こなしていること自体が、双方すごくギャップがあるので、それが毎日の中でリフレッシュになっているのかなぁと最近思います。

    ―それはどういうことですか?

    臼田:仕事が続くと子供と遊びたくなるし、子供と過ごす時間が長くなると仕事に行く時の緊張感がいい意味で自分をビシっとさせてくれるんですよね。やっぱり好きなお仕事をさせてもらっているし、子育ても好きでやっているんだなぁ、とその時にすごく実感します。

    ―両方あるからバランスが取れるという感じでしょうか。

    臼田:でも、以前は少し神経質になっていたんです。子育てしながら仕事をしていると、今までのように作品に時間を割けないじゃないですか。だから「仕事と向き合えていないんじゃないか」と考えちゃうんですね。

    一方で仕事中に子供を誰かにみてもらっていたりすると、今度は子育てを疎かにしている自分に気づくし、「これってもしかしてすごくズルしているんじゃない?楽しているんじゃない?子育てを休んでいるんじゃない?」という気持ちになったり…。

    でも最近は協力してくれる人に感謝して、「どっちも自分の人生に必要なものだ」と思えるようになってきました。そうすると余分なことを求めなくなりました。

    ―余分なこととは?

    臼田:以前は夜遅くにお酒を飲みに行くことが好きでした。でも今はその時間があったら子供の寝顔を見たいし、朝早く一緒に起きたい。生活する上でやらなきゃいけないことが多すぎるということももちろんありますが、趣味や興味が子育てや生活に合わせて順応していっているような気がします。

    ―素敵な考え方ですね。忙しい毎日だと思いますが、その中で続けている習慣などはありますか?

    臼田:私好きになったら、とことんハマるオタク気質なところがあるんですよ。例えば音楽。以前はライブによく行ってました。でも今はライブ会場に行かなくても音楽は聞けるしライブ映像も観られますよね。空き時間にスマートフォンで情報を調べて、YouTubeも観たりします。

    あと、バレーボールを観戦するのが大好きなんですよ!昔は試合の観戦によく行ってたんですけど、今はネットでチェックしています。新人のいい選手がいたらすぐ調べちゃいます(笑)。そういう趣味の時間は今でもすごく大事にしています。趣味に費やす時間はすごく減っているんですけど、途切らせないことですね。細く長く続けるようにしています。

    ―臼田さんはどんな時に幸せを感じますか?

    臼田:うーん、でも私目覚ましに起こされる日常じゃなくなったので…。以前は早起きしなくちゃいけない朝は目覚ましが必要でしたけど、今は5時半くらいに自然と目が覚めるんですよ。子供が生まれてから早寝早起きになりました。目覚まし時計に支配されない朝がちょっと幸せかな〜!

    ―お子さんとはどんなことを一緒に楽しんでいますか?

    臼田:とにかく活発なので、いろんな所に行っています。近所だけでなく、行ったことのない公園とかにも行ったりします。すべり台とかもう1人で滑ってますよ〜。

    ―お子さんとの時間で、愛おしいと感じる瞬間はどんなときですか?

    臼田:それはもう寝ている時ですよ(笑)。それ以外はヒヤヒヤしています!

     

    代わり映えのしない5人に会いにいこう!

    ―SNSを見ても映画版『架空OL日記』を待ちわびているファンがたくさんいます。ファンのみなさんにメッセージをお願いします。

    臼田:「お待たせしました!」という感じ。本当に相変わらず、5人元気にやっています。劇場に会いに来てください。パワーアップとかはしてないので(笑)。

     

    臼田さん、素敵なお話どうもありがとうございました!

     

    • ■映画情報
    • 映画『架空OL日記
    • キャスト:バカリズム、夏帆、臼田あさ美、佐藤玲、山田真歩、三浦透子、シム・ウンギョン、石橋菜津美、志田未来、坂井真紀
    • 監督:住田崇
    • 脚本:バカリズム
    • 原作:バカリズム「架空OL日記」(小学館文庫)
    • 配給:ポニーキャニオン/読売テレビ
    • https://www.kaku-ol.jp/index.html
    • ©2020「架空OL日記」製作委員会
    • 228日(金) 全国ロードショー

     

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