フランスをはじめ、さまざまな国の人々が集まる街、神楽坂。ちょっと路地裏をのぞくと、ビストロやイタリアン、エスニック料理など国際色豊かな飲食店も多くあります。
そんな神楽坂で今回ご紹介するのは、イタリアパン・フォカッチャの専門店。神楽坂駅と江戸川橋駅の間にある、黄色い扉が目を引く『フォカッチェリア アルタムーラ』です。
店主でありフォカッチャ職人の山本誠さんにお話をお聞きしました。
イタリアの“かかと”プーリアにあるパンの街
店内に入ると、ふわっと香るオリーブオイルの匂い。そして「Ciao!」と、イタリア人のお客さんの声が。
もともと日本のレストランでフランス料理を作っていたという山本さんが、イタリアの空気溢れるフォカッチャのお店を始められたきっかけを伺いました。
「以前、旅行でイタリアのプーリア(ブーツにたとえたときのかかとのあたり)にあるアルタムーラに行ったことがあったんです。家族みんなでそろってマンマが一生懸命作った料理を食べるとか、昔からの文化や暮らしが今も続いていてすごくいいなと思い、気に入りました。それで、アルタムーラのレストランで修行をしたんです。住んでいるうちにその街がパンで有名な街だということがわかって、パンの勉強もしました」と山本さん。
街には「 パーネ・ディ・アルタムーラ(アルタムーラのパン)」という街の名前を冠した1キロくらいある大きなパンがあり、みんなそれを焼いて食べているのだとか。そんなパンの街アルタムーラでフォカッチャに出会ったのだそうです。
「日本のフォカッチャというと、オリーブオイルを使ったシンプルなものをカットされた状態で売られていたり、レストランで料理に添えられていたりするイメージがあるかと思います。でも、現地では大きく丸く焼いて、いろんなお野菜がのっています。イタリアではだいたい量り売りで売られているので『これくらいの大きさで』とお客さん会話をしながら切って量って売るっていう感じですね。それをクルクルっと紙に包んで渡すんです。
いざ自分のお店を持つことになったときに、レストランじゃなくてもっと違うことをしたいなと思っていたんです。それで、フォカッチャのお店がいいんじゃないかなと思うようになって。フォカッチャの専門店というのはあまりありませんし、自分が料理を学んできた中でフォカッチャにすごく思い入れがあったので」と教えてくれました。
オリーブオイルや使っている粉の種類も同じものを使い、地ビールを仕入れるなどできる限り現地ものを使っています。また、修業先で学んだ本場の作り方でフォカッチャを作っているので、本場の味が懐かしくて来てくれるイタリア人のお客さんも多いのだとか。
カリっとした食感がやみつき!
日本では、フォカッチャというとふかふかとした厚みのあるものが多いですが、本場イタリアで学ばれた山本さんのフォカッチャはどうなのでしょう?
「うちのフォカッチャはあまり厚くなくて、カリッとした食感が特徴です。プーリアなど南イタリアのスタイルですね。生地にじゃがいもを練りこんでいるので、カリッとした食感になるんです」とおいしい食感の秘密を教えてくれました。
お店では、毎日4〜6種類のフォカッチャを焼いているという山本さん。その形にも違いがあり、丸い形をしたホールタイプのフォカッチャと、大判の長方形型で焼いたあと切り分けたフォカッチャがあります。
「僕は丸い方が好きですね。バゲットでも端が好きな人がいるじゃないですか?フォカッチャは丸で焼くと端が多いので、よりカリッとしておいしいんですよ。四角い型で焼くと角の4角がカリッとするので、カリッとした食感が好きな常連さんは『角ください!』と、買って行かれますね」と教えてくれました。
さっそく、山本さんおすすめの“端が多い”丸いフォカッチャをいただきます。頬張った瞬間、カリっと音が!「私の方まで聞こえてきましたよ」と笑顔の山本さん。カリッとした食感と香ばしい粉の味とオリーブの風味で、軽い食べ心地です。
店内でいただく時には、山本さんがリベイクしてくれます。お家で食べるときは、オーブントースターで1〜3分くらいで様子を見て温めるとよいそうですよ。
フォカッチャサンド「ドッピア」にブリオッシュのサンドイッチ!?
プレーンなフォカッチャでサンドしたホットサンド「ドッピア」。イタリアのチーズとハムを使ったシンプルな具材で、プレーンのフォカッチャとの相性も抜群です。ボリュームもありますが、ひと口食べるごとにもうひと口と止まらないおいしさでした。
他にも、パニーニやピザ、フルーツのパイや「貴婦人のキス」というイタリアのお菓子などもありました。ランチとしても、カフェとしてもイタリアのいろんなメニューを楽しむことができますね。
気になるのがこちらのサンドイッチ。なんと直径40cmの丸い大きな型で焼いているというブリオッシュ。そこに、具材をサンドして切り分けています。
「このサンドイッチ、僕の修業先での人気商品だったんです。初めて見るっておっしゃる方も多いですね」と山本さん。
ハム・マスカルポーネチーズ・ルッコラを入れてサンドするのが基本のメニューで、たまにスモークサーモンを入れてみたりとそのときによって違うこともあるそうです♪
つい、長居したくなる空間
夕方に訪れた店内では、ちょっと遅めのランチを食べる人、パイとコーヒーで一息つく人など、ゆったりとした時間が流れています。また、山本さんの親しみやすい人柄もあり常連さんも多いよう。お客さんに「段差気をつけてね」「それ似合っていますね」「コーヒーおかわりしますか?」などさりげなく声をかけてくれる心地よさが、初めて訪れる人でもリラックスした時間が過ごせる理由なのかもしれません。
さりげない一声ですが、意外と普段の生活ではなかなか聞こえてこない気がします。イタリアの昔ながらの文化が続いている街アルタムーラが、ここ神楽坂『アルタムーラ』にあるように感じました。
温かさを感じる、そして焼きたてのカリッとした食感がおいしいフォカッチャをぜひ味わってみてはいかがでしょうか?
- ■お店情報
- フォカッチェリア アルタムーラ
- 住所:東京都新宿区山吹町5番地(地図)
- TEL:03−6265−3842
- 営業時間:[月〜木曜日] 8:00〜20:00 、[金曜日]8:00〜22:00、[土曜日]9:00〜22:00、[祝日]9:00〜18:00
- 定休日:日曜日
※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。
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