明るいうちからアペロを楽しむのが楽しい季節がやってきました。アペロの定番といえば、スパークリングワインやビールですが、今、注目を集めているのクラフトジン。ジンとは、さまざまなボタニカル(薬草)で風味付けされた蒸留酒で、世界中で飲まれているスピリッツのひとつです。そのジンが最近、個性豊かに、バリエーション豊富に進化しています。
今回は、6月に開催された『GIN FESTIVAL TOKYO』の主催者であり、世界各国、日本中のジンを知り尽くした株式会社フライングサーカス 代表の三浦さんにクラフトジンの魅力を教えていただきました。
ボタニカル使いに個性が表れるジン
バーや飲食店でジントニックを飲んだことがある人は多いのではないでしょうか?でも、ジンがどんなお酒なのかを説明するのは意外と難しいはず。
ヨーロッパでは、ジンを「農作物由来のアルコールにジュニパーベリーで風味付けしたアルコール度数37.5度以上のお酒」と定義。近年は、アメリカ、ヨーロッパ各国、オーストラリア、日本、タイなど世界各地でジンが作られており、作り手や産地の個性を出したクラフトジンが増えています。
「ジンはジュニパーベリーを使うこと以外は、比較的作り方が自由なんです。なので、地中海ではローズマリーやタイムを使ったジンを作っていたり、北欧でベリーを使ったり、スコットランドでは地元で採れるりんごや昆布を使ったり、そういったその土地の食材や食文化が反映されたボタニカルをブレンドしたご当地ジンが増えてきたことが、クラフトジンに注目が集まったきっかけのひとつだと思っています」。
その土地に根付く食材を味わおうという近年の世界的な食のトレンドもあり、土地ごとの味わいを閉じ込めたお酒としてもジンが注目されたと三浦さんは言います。
また、ジンごとにさまざまなハーブやボタニカルの香りが楽しめるので、「ラベンダーの香りがする」「はちみつのフレーバーかな?」「これはなんのスパイスの香りだろう?」と、お酒好きだけでなく、いろんな人が楽しめる要素も。
ジンから広がる世界
「ジンは、飲み手と作り手が近いお酒」とも三浦さんは言います。もともと別のお酒を作っていた蒸留所が実験的にジンを作り始めたり、ジン好きが高じてマンションの一室で作っている人がいたり、作り手のストーリーもまたクラフトジンのおもしろさ。
ジンの本場イギリスでは、ジンツーリズムと呼ばれる蒸留所を巡るツアーも人気なのだとか。
「ジンをきっかけに旅行したり、そこで作り手と話すことで興味が広がっていくのもジンの魅力です。ジンには土地の味や作り手の愛が詰まっていて、それぞれにストーリーがあるので、知れば知るほどおもしろくなってくるんですよね」。
日本でも盛り上がるクラフトジン
最近では日本のクラフトジンも増えてきていますが、三浦さんはジャパニーズジンをこう評価します。「日本は素晴らしい軟水が豊富で、ウイスキーや焼酎で培われた高い蒸留技術もあるので、これからジャパニーズジンが世界のジンムーブメントを席巻するだろうと思っています」。
もともと酒造りの文化がある九州、沖縄を中心に、広島、北海道など、各地の蒸留所が個性豊かなジャパニーズジンを模索しているのだそう。
ジャパニーズジンの先駆け的存在の京都蒸留所の「季の美」。米のスピリッツをベースに玉露、柚子、ヒノキ、山椒など日本らしいボタニカルを繊細にブレンド。水も伏見の伏流水を使用するなど、徹底的にこだわった日本のジンとして世界からも注目を集めています。
透明感のあるすっきりとした飲み心地と繊細な香りが楽しめるので、クラフトジンビギナーにもおすすめです。
香りを楽しむフランスのジン
ワインが主流のフランスでも、クラフトジンはアペリティフとして人気を博しています。パリに1つだけある蒸溜所で作られる「DISTILLERIE DE PARIS(ディスティレリ・ド・パリ)」というジンは、シャネルのNo.5にも使われてるボタニカルを使用。飲む香水と称されるほどに、芳醇な香りが魅力のジンです。
食後酒でおなじみのカルバドスというりんごのお酒をベースにした「Le gin(ル・ジン)」、コニャックの産地で作られるユニ・ブランという白ぶどうを使ったジン「g’Vine Gin Floraison(ブランドジーヴァイン ジン フロレゾン)」など、フランスのお酒作りの技術を生かしたジンもあります。
香りが特徴的なのがフランスのジン。ワインや香水など香りを楽しむ文化が根強いフランスならではのジンと言えるでしょう。
こだわりのトニックで楽しむジントニック
ジンを使ったカクテルはいろいろありますが、一番ベーシックな飲み方はやはりジントニック。普段あまり注目することのないトニックウォーターですが、ジンをより一層味わうためにとても重要な存在です。
トニックウォーターの本場はイギリス。ここ数年で、香料不使用やオーガニックにこだわったトニックウォーターも登場。それらで割ることで、ジンに入っている素材そのものの味わいをより感じられ、飲み疲れしないクリア爽やかさも楽しめます。
世界で一番売れているのは『FEBER-TREE(フィーバーツリー)』。そのままでもおいしく、安いジンを割ってもおいしくなるのだそう!
レモン果汁とアガヴェ(テキーラの原料)から抽出して作る「Q」は、トニックだけで飲むとアガヴェ由来の独自の香りがふわーと抜けるのが特徴。
「『Q』は甘さが控えめなので、きっちりしたジントニックが作れます。ジュニパーベリー、レモングラス、コブミカンの葉などを抽出した『FENTIMANS(フェンティマンス)』は、トニック自身の香りがしっかりしていて個性が強い。
日本にはまだあまり入ってきていませんが、ロンドンでは青りんごやきゅうりのフレーバーがついているものもよく飲まれています。トニックだけで飲み比べしてみたり、同じジンでトニックを替えてみてもおもしろいですよ」(三浦さん)。
「Q」と合わせたジンは、アメリカの『ST.GEORGE(セントジョージ)』。モミの木などクリスマスツリーで使うような針葉樹が入っていて、柔らかく木の香りがするボタニカル感がちょうどいいジンです。甘さ控えめの「Q」と合わせることで、シャープな味わいに。
最初の1杯は直感で
本当にたくさんの個性豊かなクラフトジンがあるので、選び方に悩んでしまいそうですね。
「お酒というとどうしても知識が必要な気がしてきますが、『こういう味が好き』とか『フランスが好き』、『パスタが食べたいからイタリアのジンにしよう』、『ラベルがかわいい』など、直感でいいと思います。
知識があった方が楽しめることももちろんありますが、知識はあくまでも好きなお酒を見つけるためのガイド。まずは1杯、直感で選んで、そこから『もう少しスッキリしたのが飲みたい』と自分のお気に入りを探していくのも楽しいですよ」。
ストーリーがあり、作り手にとっても、飲み手にとってもわかりやすく、距離が近いクラフトジン。もちろんマニアックになれば、いくらでも突き詰めて行け、1つのジンから興味や縁がつながっていく楽しみもあります。
お酒好きな人もそうでない人も、詳しい人も初めて飲む人もいろんな角度でいろんな楽しみ方ができて、現在進行形で進化しているのがクラフトジンの楽しみなのかもしれません。難しいことは考えず、まずは1杯、クラフトジンで乾杯してみてはいかがでしょうか。
- ■お店情報
- The Flying Circus
- 住所:東京都渋谷区桜丘町4-17(地図)
- 営業時間:12:00〜23:00
- 定休日:日曜日
- ※記事の内容は取材当時のものです。 最新の情報は、お店のHP、SNSなどをご確認ください。
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