
日本では、もはや一過性のブームを超え、すっかり定番となったアフタヌーンティー。その発祥の地であるイギリスとはまた異なる、フランスならではの美意識と美食文化に彩られたティータイムが、パリにはあります。
パラスホテルの壮麗な空間、世界最高峰のパティシエたちが生み出す芸術的なスイーツ、そしてモードとガストロノミーが交差するクチュール感あふれる世界。午後のひとときを、単なる「お茶の時間」ではなく、ひとつの美食体験として昇華させる、パリのアフタヌーンティー。
今回は、スターシェフたちの才能とパリの美意識が凝縮された、いま訪れたい3つの特別なティータイムをご紹介します。
1. 果実の彫刻とスターシェフの共演
感性を刺激する、アートなアフタヌーンティー
ル・ダリ(Le Dali)/ル・ムーリス(Le Meurice)
228, rue de Rivoli, 75001 Paris , France

Le Tea Time par Cédric Grolet 95€
1835年創業。パリのリヴォリ通りに佇む「ル・ムーリス」は、5つ星ホテルのさらに上に位置する「パラス」の称号を持つ、世界屈指のラグジュアリーホテルです。

その館内にある「ル・ダリ(Le Dali)」は、画家サルバドール・ダリにちなんで名付けられたダイニングスペース。
ここで楽しめるのが、世界中のスイーツファンを魅了するスターパティシエ、セドリック・グロレ(Cédric Grolet)氏と、ル・ムーリスの総料理長、オモリー・ブウール(Amaury Bouhours)氏による、贅沢なコラボレーションです。

テーブルに運ばれてくるのは、まず洗練されたセイボリーの数々。
そして、テーブルを飾るのが、セドリック・グロレ氏の代名詞ともいえる「Fruits de saison sculptés(季節の果実の彫刻)」です。

一見すると、まるで本物の果実そのもの。しかし、ナイフを入れ、ひと口味わえば、その内側には、果実の風味を凝縮した精緻な世界が広がります。
口にした瞬間に広がる、果実本来の芳醇なアロマ。みずみずしい果汁感。そして、素材の持つ繊細な酸味。視覚的な驚きと、味覚の感動が同時に訪れる、まさにセドリック・グロレ氏ならではの世界観です。
さらに、このアフタヌーンティーの魅力は、テーブル上に並べられた料理だけにとどまりません。
途中には、焼きたてのマドレーヌやマフィンなどが、何度もテーブルへと運ばれてきます。
その瞬間、その場でしか味わえない温度と香りが、ティータイムに新たな表情を加えてくれます。

アート、パティスリー、そして卓越したサービス。
ル・ダリで過ごす午後は、パリの最先端にあるガストロノミーを五感で味わう、ひとつの舞台作品のようでした。
2. 繊細なセイボリーから果汁あふれるタルトまで
優雅さを極めた、至福のティータイム
フォーシーズンズホテル ジョルジュサンク パリ
(Four Seasons Hotel George V, Paris)
31 Av. George V, 75008 Paris , France
Le Tea Time George V 125€
パリを代表する最高級ホテルのひとつ、フォーシーズンズホテル ジョルジュサンク パリ。

華やかな花々で彩られたロビーを抜け、洗練されたサロンへ。
そこから始まるティータイムは、優雅さと遊び心、そして卓越した技術がひとつのテーブルの上で交差する、贅沢な美食体験です。
まず登場するのは、温かなセイボリー。
黄金色の衣をまとったクロケットは、米の代わりにタピオカを用いたユニークな一品。
さらに、贅沢にスライスされたトリュフをのせたシューや、ふんわりとしたバンズにロブスターを挟んだ一品など、ひと皿ごとに異なる趣向が凝らされています。
繊細でありながら、味わいには確かな存在感がある。塩味、コク、香りのバランスが緻密に計算されたセイボリーは、アフタヌーンティーという枠を超え、ひとつのコース料理を思わせます。

続いて登場するのは、旬の果実を主役にした華やかなスイーツ。
サクサクとしたパイ生地に、みずみずしいイチゴやフランボワーズをふんだんに重ねたタルト。小ぶりのスキレットで焼き上げた、温かなダークチェリーのクラフティ。そして、濃厚なチョコレートの風味を楽しむシュー生地が重なったルリジュース。途中には、爽やかなソルベや、フレッシュなメロンを使った冷たいデセールも登場。
濃厚な味わいの合間に、軽やかな清涼感が加わり、心地よく楽しむことができます。

そして、こちらで特筆したいのが、その贅沢なボリューム感です。
食べきれなかったペストリーやタルトは、ホテル特製のギフトボックスに丁寧に包み、持ち帰ることができます。
ホテルに戻ってから、あるいは翌朝、旅の余韻とともにいただくスイーツ。
そのひとときまで含めて、ジョルジュサンクのティータイムは、優雅な記憶として残り続けます。
3. モードとガストロノミーの融合
ルイ・ヴィトンが贈る、甘美な美食の旅
マキシム・フレデリック at ルイ・ヴィトン(Maxime Frédéric at Louis Vuitton)
2 Rue du Pont Neuf, 75001 Paris , France
Louis Vuitton Tea Time 55€〜115€
ポンヌフを望む「LV DREAM」内に位置する、「マキシム・フレデリック at ルイ・ヴィトン」。
ここで腕を振るうのは、シュヴァル・ブラン パリのスターパティシエ、マキシム・フレデリック(Maxime Frédéric)氏です。
ラグジュアリーと遊び心。伝統と革新。そして、ファッションと美食。
そのすべてがひとつの空間に凝縮された、まさにパリらしいクチュール感あふれるティータイムです。
テーマは「Journey(旅)」。

ゲストは、3つのスタイルから好みに合わせて選ぶことができます。
The Discovery 55€
6種のミニデザートを軽やかに楽しむコース。マキシム・フレデリック氏の世界観を、気軽に味わいたい方にぴったりの構成です。
The Expedition 90€
6種のミニデザートに加え、セイボリー、またはアシェット・デセール(一皿仕立てのデザート)を組み合わせたコース。甘味と塩味の対話を楽しむ、洗練された構成です。
The Odyssey 115€
セイボリー、6種のミニデザート、そしてアシェット・デセールまでを網羅。「旅」というテーマを最も深く味わい尽くす、究極のフルセットです。

テーブルに並ぶのは、ルイ・ヴィトンのアイコンであるモノグラムやダミエの意匠を思わせるスイーツやセイボリー。
ブランドの世界観を映し出しながらも、単なる装飾に終わることなく、ひとつひとつの味わいに確かな完成度があります。あまりに精巧で美しく、食べることをためらってしまうほど。けれど、ナイフを入れた瞬間に広がる香りと味わいが、視覚だけではない美食としての魅力を教えてくれます。

ティータイムの後には、併設されたショコラトリーにもぜひ足を運びたいところ。壁一面に並ぶアンティークのトランクが圧倒的な存在感を放つ空間には、まるでアートピースのようなチョコレートが美しくディスプレイされています。
モノグラムを思わせるモチーフが施されたボンボンショコラ。ルイ・ヴィトンを象徴するトランクを思わせる、精巧なチョコレートバー。どれも、この場所でしか出会えない特別な存在です。

〈パリのアフタヌーンティーを楽しむポイント〉
事前予約は必須:
どのスポットも世界中からゲストが訪れる大人気アドレス。渡航が決まったらすぐに公式サイトなどで希望日時をキープするのが鉄則です。
ゆったりとした時間を確保:
パリのティータイムは単なるお茶の時間ではなく、コース料理のようにじっくり楽しむエンターテインメント。2時間ほどゆとりを持って、至福の空間と味覚の余韻を味わってみてください。
文:岩谷貴美














