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パンのすべてを愛したい。池田浩明さんに聞くパンの楽しみ方

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パンのすべてを愛したい。池田浩明さんに聞くパンの楽しみ方

近年多くの雑誌で特集が組まれるパン。その中で必ず目にする名前があります。「パンラボ・池田浩明」。

自ら「ブレッド・ギーク(パンおたく)」と名乗り、パンに関する書籍をたくさん発表しているパンライターの池田浩明さんです。

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あらゆるパンを愛し、食べ、おいしいと思ったら作り手に会いに行く。「パンのすべてを愛したい」という池田さん。その情熱は一体、どこからくるのでしょうか?5月に発売されたムック本『パンの雑誌』のお話を伺いながら、池田さんの人となりに迫りました。

 

パンの研究所「パンラボ」とは

—まず、池田さんの職業について教えてください。

池田さん(以下、池田):パンラボ」という、パンを食べて研究するサークルの主宰です。書籍の執筆も手がけ、パンに何ができるのかをいつも考えています。

−池田さんが主宰されている「パンラボ」とはどのような団体なのですか?

池田:「パンラボ」はある雑誌の企画ではじまったパンの研究所です。ブログのトップページに“パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。”とあるように、当初、パンは好きだけど知識もあまりなく、自信もありませんでした。そこで、パンを食べる仲間と編集者、デザイナーと一緒になってパンを知ろうということで結成したのがきっかけです。

今でこそ、パンライターとして活動していますが、ひとつパンのことを知ると、そこからやっぱり知らないことがまた増えていきます。なので、“知りたくて、何も知らない”という状況は今も変わってないのかもしれませんね。

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−「パンラボ」の取材基準は何ですか?

池田:基本的にすべてのパン屋さんに行きたいと思っていますので、これといった基準はありません。最近は、「弟子が新しいお店をオープンするから行ってみてください」というように、パン職人の紹介でお店を訪ねることが多くなりました。

−池田さんが、パンライターを始めたきっかけを教えてください。

池田:昔からライターだったのですが、パンだけに絞った専門ライターではありませんでした。吉祥寺の『ダンディゾン』に取材に行った時、シェフに「小麦は何ですか?」と尋ねたら「カメリア」という、スーパーにも置いてある小麦を使用しているという答えでした。おいしいパンは特別な素材から作られると思い込んでいたのでびっくりして…。一般的な粉でも、職人の熟練の技術でおいしいパンになるのだと感心しましたね。

その時に、パンにはワインのテイスティングコメントのように、特徴や香りを語る言葉がないなと気がついたのです。パンでそれをやったらおもしろいかもしれないと思ったのがきっかけです。

 

池田さんの最近食べたおいしいパン4選

−発売されたばかりの『パンの雑誌』は「おいしいパンってなんだろう?」がテーマですが、池田さんが最近食べたおいしいパンを教えていただけないでしょうか?

池田:たくさんあるので話が止まらなくなってしまうのですが、厳選してお伝えします。

 

1.【代々木『キャメルバックコーヒー』】

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すし職人が始めた異色のコーヒー&パンの店。バゲットサンドの上にすしネタの厚焼き卵が乗った不思議なルックスのバゲットサンドが看板商品です。焼き目がついていない黄色の厚焼き卵は、熟練のすし職人でも作るのが難しいとか。その絶品卵焼きのスフレのような食感と、歯ごたえのあるバゲットとのコントラストが楽しいです。

また、素材に合わせて『カタネベーカリー』、『365日』、『タルイベーカリー』のバゲットを使っています。僕が好きなのは『カタネベーカリー』のバゲットを使用した「生ハムと大葉」。また、お店はスタンドになっていて、その場で食べられるのですが、バゲットを提供するときに柚子をすりおろしてくれるなど演出も見ていて楽しく、飽きません。

(『キャメルバックコーヒー』の記事は8月公開予定!)

 

2.【三軒茶屋『シニフィアンシニフィエ』】

パン好きなら知らない者はいない名店ですよね。僕が好きなのは「パン ペイザン」です。ペイザンは、フランス語で農民という意味。その名が示すとおり、小麦の香りが堪能できる味わい深いパン。おかゆのような食感の素朴ながら豊かなパンです。そのほかにも、ウスターソースとビールのパンなど、食べたことがないようなパンが楽しめますよ。

 

3.【池尻大橋『ボネダンヌ』】

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「ブリオッシュナンテール」は食パン型のブリオッシュ。僕はこのパンを見たとき、「只者ではない!」と思ったんです。パンの側面がくにゃっと折れる、いわゆるケービングという状態だったのですが、即座においしいだろうと思いました。職人は見た目が悪いケービングを嫌いますが、僕は愛嬌があっていいと思いますね。食感もまるで綿毛が繋がっているような、空気をはらんだようにはかなく、他には出せない食感です。

 

4.【代々木上原『パドラーズコーヒー』】

「ホットドッグ」がとてもおいしいです。こちらもコラボレーションが絶妙!メインのソーセージは、渋谷『リベルタン』と、六本木の『祥瑞/SHONZUI』、パンは『カタネベーカリー』。素材の組み合わせに細やかな心遣いを感じます。サードウエーブコーヒーに合わせていただくとよりおいしいです。

 

−カフェやコンビニ、スーパーでもパンは買われるんですか?

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池田:『スターバックスコーヒー』の「シナモンロール」は好きですね。もう5年くらい食べ続けています。コンビニパンならPASCOの「クロワッサン」が好き。袋の中に4つも入っていて、お得な気分になれます。安いので色々と実験できるのも良いんですよ。先日は、このクロワッサンを使ってホットドッグを作りました。クラフトのチェダーチーズとウインナー、ケチャップを少々。隠し味に少しバターを乗せたらとてもおいしくできました。

−自分でアレンジもされるんですね。そういえば、『パンの雑誌』にもパンを冷凍して、焼き戻す方法も掲載されていました。

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池田:パンを入れたビニール袋の空気をストローで抜いて保存するか、ラップで包んでビニール袋に入れて冷凍するとおいしさがキープできますよ。僕は疲れて帰って来て、ラップを取り出すのが面倒なので、ストローで空気を抜いて保存します。

−池田さんが考える「おいしいパン」の定義とは何でしょうか?

池田:素材をうまく使えていることだと思います。素材の個性をうまく引き出せていないと素材もパンもかわいそうですよね。

自然からいただく小麦にダメなものはありません。ただ、挽き方や製法で味は微妙に変わるものなのです。
先日、良いそば粉を使っているお蕎麦屋さんに行ったのですが、食後に出てきた蕎麦湯がおいしくて、飲むだけで元気になれました。蕎麦湯にまで素材の良さが出ている良い例。そんな風に食べるだけで元気になれるパンが理想です。

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それと、自分が食べ物に向かう姿勢も重要ではないでしょうか。例えば、「普段食べているパンはおいしいのか?」と問われると微妙なところもあると思います。「食べる」という行為にちゃんと向き合っているかどうかが大切です。

僕は、真剣に向き合って食べます。ときには食べるという行為に感動が生まれるくらい、一生懸命食べてみてください。そうすることで、普段見落としていたパン職人や小麦の生産者のさりげない気配りに気がつくかもしれません。作った人の存在感があるパンは本当においしいですよ。

それと、掘り下げて興味を持つことも重要です。パンだったら、作る人もいれば、原料の小麦や水、塩のことなど、いくらでも掘り下げることはできると思います。そうやってパンと向き合っているうちに、パンへの使命感も出てきましたので、最近はパンをとりまく人たちを支える環境づくりもしたいと思っています。

 

国産小麦の魅力を伝える「新麦コレクション」

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−『パンの雑誌』の企画「新麦コレクション」につながる想いですね。

池田:そうですね。「新麦コレクション」とは、日本全国の小麦の産地を結ぶプロジェクト。国産小麦の生産者やパン職人、国産小麦のメーカーの人たちと一緒に運営しています。

国産小麦のおいしさを知ってもらい、流通を整え、生産者にも元気になってもらいたいという気持ちから立ち上げました。

また、フランス産小麦を一番おいしく食べられるパンはバゲットであるように、国産小麦を一番おいしく食べられるパンが日本中に生まれてきたらいいなと考えています。国産小麦も種類ごとに味が違うなど、知れば知るほどおもしろいテーマです。

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池田さんは「パンを毎日食べても飽きることはありません。それどころかもっと追求したくなる!」と目を輝かせて語る、根っからのパン好き。今はそんな愛してやまないパンの新しい道を作り出す準備をしているところなのだそう。そのひとつが、『パンの雑誌』にも掲載されている「新麦コレクション」。ユニークな観点からパン業界を見つめてきた池田さんならではの経験を生かして、国産小麦の流通に新しい価値を見出し、日本ならではのパンが誕生する日が楽しみですね。

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幅広い知識と人脈を活かして「おいしいパン」を追求した池田さんが作り上げた『パンの雑誌』は、パンとパンを愛するすべての人に捧げるラブレターのような本。ページをめくれば知識が増えて、パンに対する愛情も深まりますよ。手元に置いて度々開きたくなる本です。

 

  • ■書籍紹介
  • 書名:パンの雑誌
  • 著者名:池田浩明
  • 出版元:ガイドワークス

 

 

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